2008年08月12日

YAMAHA RD50 (後編)

(前回の続き)

さて信号待ち中に怪音を発して止ってしまった RD50,一体如何なる事態が出来したのでありましょうや.
いや慌てるべからず.ちょうど交差点の斜向いにガソリンスタンドがございました.二段階右折を装って素知らぬ顔で給油し,落着いて診てみましょう.

まずもって音振から瞭然だが焼付きなどではない.キャブレタ周りの燃料系でもないことは長い経験から解る.ではプラグ火花はと見ますと,ヤレヤレまたもや弱ぅございます.しかし先刻の C.D.I.交換前とは違い,途切れ途切れではなく,スパークは規則的に飛んでいるもののアイドリングを維持出来るほどには強くない様子.ということは取り敢えずは押し掛けをすれば掛るかも知れぬぞソレッ……よし掛りました.

しかし掛ったは良いが,先程と打って変わってパワーは無いしミスファイアも多く回転も上がらぬ.これは無理に走らせてはならぬ…とワタシのゴーストが囁くので,押して帰ることに.

いやそれにしても今日もイイ天気,と言うか激しく炎天.こうして動かなくなったバイクをトコトコ押して陽炎揺らめく真夏の街道を歩いたことが,遠い昔から数えて幾度あったことか…と永劫回帰のデジャヴュを感じつつ,軽く細い車体を眺め降ろしながら思い出したが,以前,毛玉明と喋っておるとき「RD50を擬人化したらどんな娘か」という話になりまして,ハタチ前後の若者とそういう話題を交す初老のワタシってのもどうかとは思いますが,差詰め「幼馴染ツンデレお嬢」であろうと.

RD が幼馴染なのはワタシの個人的事情だが,生まれはピアノなんぞ造っているハイソな家の都会的お嬢様,見た目は (一応は一流デザインハウスの描いた) 端正な容貌に細身で長身,表向きは何でもソツ無くこなす優等生ではあるが,実はけっこう (設計に) 抜かりもあって完璧超人とは言い難いことは幼馴染のワタシは熟知しておる.ただ本人は小娘の癖に名家意識があってプライド高く気も強く,自分からは決して落度を認めぬであろう…というキャラですな.

何やら無理矢理そう設定してみると尤もらしい気がして来るから妙なもので.誰かそのテの絵が得意な方が居られたらひとつ描いて下さらぬか.聞くところによれば,ツンデレというのは
こ,故障なんかじゃないんだからねっ, C.D.I.なんてただの消耗品じゃない!
…てな喋り方をするらしい.いかにもそういうことを言いそうな感じが致しますな,このバイクは…

暑さの所為で脳が煮えて益体もない話になったがそれはともかく,かような症状は電脳ならぬコイルが煮えた時によく見られるものであります.すなわち,コイル内の絶縁材が劣化しておったりハンダが剥れ掛ったりしておると,冷間時には正常作動するものが,稼働するにつれて内部温度が上がり,そこで線間短絡を起したり抵抗損失が増えて異状を訴えるというカラクリ.例えば最もよくある事例はイグニションコイルでして,冷間時に直流抵抗を計ると正常値なのが,走り出して暖機を終えると不可なかったり致します.ワタシが最後にこのテの故障を修理したのは FIAT Panda か,いや LANCIA 037/Rally であったかも知れぬ.どちらも遠い日の夢のような記憶ではあるが.

…なのですが,戻ってイグニションコイルを点検しても異常は見当たらず.念のためスペアの YSR のイグニションコイル (刻印も形状も全く同じでした) に換えてみても駄目.ということは,次にソース/ピックアップコイルが疑わしい.とは申せ,この2つのコイルの装着箇所はフライホイール (ロータ) の中で,生憎フライホイールプラーを持って来ておらぬゆえ,いくら疑わしくとも外せぬのでは修理は出来ず,出直して来るしかございませぬ.まぁよかろう.今日は延々とバイクを押し歩いて草臥れたし,この辺で勘弁してやるか.帰る前に次回に備えてエンヂン左カバーを外しておこう…

…ちっ.クラッチプッシュロッドのオイルシールが漏っておる.先日診た時には何ともなかったが,先刻の試走の際にサイドスタンドで立てて車体が傾いたために油面も傾いて馬脚を曝わしたと見える.これもこの型のエンヂンの弱点と申しますか癖で,ちょうどドライヴスプロケットから飛散するダストやスラッジを浴びる箇所にあるため,割に傷み易ぅございます.交換は簡単.30年前に最初に FX50でやった修理がコレであった.RD50用を注文すると欠品扱いになっておるようですが,もちろん YSR 用でも GT 用でも MR 用でも流用可.

--
てなわけで数日後,今度は工具も携えて再挑戦.倉庫のシャッターを開けると,RD の傍らにはスペアのジャンクエンヂンが置いてありました.これは “もし必要なら部品取りに使ってくれ” という旧持主である大豆大臣の心遣い.胸中で深く感謝しながら調べに掛ります.では早速ソースコイルの抵抗値を計ってみましょう.

…199Ω.規定数値内異常ナシ…
しかしそんな小娘の嘘に海千山千中年のワタシは騙されぬぞ.そのままエンヂンを掛けます.前回の苦心を嗤うかのように平然と掛る.そこで前回と同じ症状が出るまで執拗にアイドリングやスロー走行を繰り返します.
そらそら,段々シドロモドロになって来た…と見るうちに,パスンとエンヂンが止りました.そこですかさず冷めないうちに抵抗値を再計測.
…無限大 Ω.つまり断線状態.やはりソースコイルが駄目.ちなみにピックアップコイルやライティングコイルは正常でありました.

【いかにも怪しい空気感漂うソースコイル裏側】
RD50ソースコイル裏側

原因は特定出来たものの,ここでチト状況は難しくなって参りました.と申しますのは,ソースコイルが悪いとなれば,YSR に限らず様々な車種のものが共通でしょうから,流用は容易に出来そうなものの,アレは取り外しが意外と面倒なため中古部品が出て来難い.かと申して新品を買えば5k円ぐらいはするらしい.さらにパーツセンタは既に夏休みであるから,注文しても届くのは盆明けであろう.そこまで新持主の毛玉明を待たせるのも気の毒である.

ではワタシがコイルを巻き直すか.なぁにコイル数の多い星形ステータコイルならいざ知らず,RD は単コイルですから,小学校の時にやった電磁石の実験と同じで根気さえあれば子供でも出来ます.しかし最近はあまりウレタン線(UEW)を売っておるところがないのが厄介.差し当り職業別電話帳で1件だけ見つけた電子部品屋でも,RD に使っている0.2mm の UEW はたまたま切らしておるそうで,さらにもうじき盆休みなのはこの店も同様.この場所の近くにはヤザキフジクラと言った国内最大級の電線工場があり,きっと何十tもの UEW が貯蔵されておろうというのに皮肉なものであります.さて困ったぞ.いくらワタシが神様でも盆休みはどうにもならぬ.あれは仏様の管轄ですのでな.

そこで思い付いたのは先程の,大豆大臣が置いて行ってくれたスペアのジャンクエンヂン.こいつの点火システムは旧式のポイント式フラマグであるため使う気はなかったのですが,調べてみると,どうやら壊れてはおらぬ模様.こいつを暫定的に移植してしまおうではないか.ソースコイルが手に入るまで C.D.I.ユニットは付けたまま遊ばせておけばよかろう.

ということに決めるが早いが回路を検討,移植作業に取り掛かります.始めて気付いたのは,C.D.I./ポイント仕様相互は配線色にかなりの互換性があることで,6極のカプラさえ同じものを使っておりました.違うところは,ポイントから出る黒の配線を,C.D.I.ユニットを経由させずにイグニションコイル一次側 (オレンジ色) に結ぶところだけでありますね.エンヂンカットオフはそれが GND に落ちれば切れますので,改造点は僅かなものでございます.

然るにこうやって懐かしいバイクを弄っておりますと,ハシナクも我が少年時代の日々が脳裏に次々と浮び上がるを禁じ得ませぬな.
あの頃の夏の日,「い」少年が家でウダウダと漫画など読んでおりますと,玄関あたりに様々なショボい爆音が近づいて参り,次いで野卑な罵声が耳に入って来たもの.すなわちそれみな当時の原付,例えば CB50K ですとか GT50ですとか MR50ですとかに跨った悪友共が集まって挑発し,勝負を強いているのである.

むろんワタシもこれに応えるにヤブサカではない.「何をしゃらくせぇ.てめえらみんな返り討ちだ!」と愛機に打ち跨り素っ飛んで行ったっきりクタクタになるまで走って,帰るのは真夜中だったり致しまして,イヤハヤ絵に描いたような馬鹿ッ小僧でしたなぁ.
あゝ,あれから幾星霜,かくも甘酸っぱい少年の日々はもう帰って来な…

…くもねぇか.何が甘酸っぱいものか.過去を美化するのも大概にせぇ自分.中高年になっても馬鹿は馬鹿で進歩ないわ.

【無駄話をしているうちに今度こそ出来上り】
RD50出来上り
【あくまでも『暫定』の出来上がりですが】

いざ,シェイクダウンテストがてら60km 離れた毛玉明の自宅までひとっ走り.ときどき停まっては各部を微調整しぃしぃ乗り詰めて参りますに,最高速度は公称出力発生回転数をやや上回る9500rpm/5速で出まして,更に体を伏せて空力抵抗を減らすと数百rpm が稼げるようであります.つまり経時劣化によるパワーダウンは少なく,エンヂンそのものはかなり良品と見ました.さらに完全な伏姿勢で約1万rpm まで回した時の最高速度は…当然ながらここには書けませぬ.

昔の不満点であった前ブレーキも,RZ50-2のマスタシリンダ換装によって,ワタシのような旧人にはレバーストローク過大に感じるもののこれは想定内で,示指・中指の二本指で引く今風のブレーキングが前提の故.もちろん後ブレーキは遊びを大きくしてロックしないように前後バランスを是正し,指二本でフル制動できる現代車並のストッピングパワーが達成出来ました.ただ,旧世代好みの中指・薬指・小指の三本指や,四本指全部を使って握力で引く操作の場合は,12.7mm マスタ (詳しくは調べておらぬが TZR50用などが該当するか) の方が,ノーマルとの違和感が少ないかも知れませぬ.

# 聞けば RD50のマスタシリンダは国内ではインナーシールキットが入手難になっており,既に正規ルートではマスタ Assey.しか出ないとかで,今後はノーマルのままでの維持が難しくなるでしょうから,他車部品流用を考える際には,そのあたりが候補となろうかと.

また制動性能を含めて品質向上が顕著なのはタイヤで,細い大径18インチタイヤの乗り味は改めて新鮮な感銘を覚えました.FX50や前期/中期 RD は17インチタイヤでしたので,そのあたりは少しフィールが異なるわけでして.今回使った DUNLOP の F18/K698は,現代では到底最新上等のタイヤとは申せませぬが,当時付いていた“YOKOHAMA World Tour”などと云うような粗末な製品とは雲泥の差.何せ当時はミニバイクレースでさえ16インチの西独 METZELER なんてのを使ってたりしたのですからなぁ.流石に高分子化学分野の25年の差は大きぅございますね.

むしろタイヤ性能を十全に使い切れておらぬのはサスペンションで,後スプリングレートは妥当ですから,縮み側減衰を弱く伸び側を強くしてやると良からん.しかしそういう調整が可能なツイン・ショックはあったかな.前フォークもメッキをやり直してオイルシールを換えフォークオイルは5番から,MR50あたりのフルクランプ三叉に換えて少し突き出し…それより何より前過ぎるステップポジションに手を入れて荷重抜重のコントロールを容易にするのが先か…

…いや,これは他人のバイクであった.自重々々…

そうこうして2時間あまりのタイムスリップツーリングを娯しむうちに毛玉明の家に着き,判明したことには,彼は普通免許のオマケに付いて来る原付資格しか持たず,イマドキの若い者にありがちながら MT のバイクは乗ったことがない.という事実でありました.

うぅむ.ライダーの技倆に関しては全然考えてなかったがまぁよろしい.子供の頃のワタシとて1週間も稽古すれば大過なく操れるようにはなった.人生何事も精進である.そのへんは良きに計らえ毛玉明よ.それと,くれぐれも事故には気を付けるように.

# あ,あと,ときどき乗らせてくれよな.

【関連エントリ】
YAMAHA RD50 (前編)
YAMAHA RD50 (中編その1)
YAMAHA RD50 (中編その2)
YAMAHA RD50 (中編その3)
YAMAHA RD50 (補遺)

posted by 「い」 at 22:55 | Comment(8) | TrackBack(0) | 輪,輜,車
[この記事へのコメント]
  1. ふーむ、ツンデレのお嬢ですか。

    となるとCB50JXなんてのは、1代で財をなした事業家の次女で、スタイル悪くは無いのだが着ているトレーナーの柄がぱっとしないてなものですかね。

    もっとも長女は普段は割烹着の働き者ですが、けっこうスポーツやらせてもそこそこなので、次女の面目無しってとこですな。

    Posted by akira isida at 2008年08月13日 19:01
  2. CB のキャラというと,K,JX の頃は確かに芋娘っぽかったのが,JX-1でぐっと垢抜けたファッションに生まれ変わったあたり,地方出身のいまいち垢抜けないコが東京の私学入って1学期が過ぎると見違えるように…という感じはございますなぁ.但しヤリクリ上手に躾けられてるから,お金は掛らない.デートがバーガーキングでも怒り出したりはしない.と.

    しかし,かつてワタシが不動の JX-1を買った頃に較べ,今は話に聞けば中古車両価格が100倍近くまで高騰しておるそうですが,現代の若者にもそういうタイプは人気があるのかも.
    Posted by 「い」 at 2008年08月13日 20:46
  3. >「い」様

    ヤマハは攻機でI.Gで押井っぽい気がしますです。

    ホンダはハイジで日本アニメーションで宮崎っぽい気がしますです。

    んで。

    スズキはアニメではなく実写...仁義なき闘いで東映で深作な感じがしちゃいます(^^;。

    だもので。

    RGをフィギュアにしたらきっとこーなる↓のでは???

    http://sculpeykingdom.seesaa.net/article/104168119.html

    http://sculpeykingdom.seesaa.net/article/87118395.html
    Posted by 1sugi at 2008年08月14日 19:14
  4. それは後年の「HENTAIスズキ」のイメージに引張られているのでは w

    この時代,つまり80年頃までのスズキというのは,実はもろに東中欧的なデザインでありまして,それが後に発展して近未来的独逸デザインのカタナまで行くわけですがそれはさておき,流れは PUCH なんぞと軌を一にしておるのですね.実例で申しますと GA50や RG50は,このへんと近縁なわけです↓

    http://easyurl.jp/fha
    http://easyurl.jp/fhb

    ただ,東中欧指向のデザインというのは,お世辞にもメジャーとは申せぬゆえ,日本では意味不明な風変わりデザインと受け取られておりました.

    また実力の方はと申しますと,RG50は2st.同士の比較で言えば YAMAHA を上回っておりまして,その所以はクランクケース一次圧縮を遺憾なく有効利用したことによると思うのですが,これは奇しくも PUCH の保有していた “ケースリードバルブ” 技術の応用.しかしケースリードは PUCH が特許を許さなかったため,抵触しないギリギリのところで造ったと思われます.つまり技術的系譜も東中欧系なのですな.

    というわけで,擬人化するなら,垢抜けない真っ黒髪の三つ編み眼鏡,容貌は極めて地味で無口なので何を考えてるかワカラナイ.しかし実は勉強は凄く出来てハンガリー系オーストリア人とのハーフだが誰も気付かない不思議ちゃん…という感じなのではないかと.
    Posted by 「い」 at 2008年08月14日 21:16
  5. PUCHが出て参りましたか。

    ヤマハ軽量車のデザインはKREIDLER との共通性を感じます。
    http://www.kreidler.nl/forum/models1972.php

    そもそも日本ではあまり知られていないのを良いことに、GKがぱくりまくったんじゃないのか・・・とも言えますが。

    御厨さと美のマンガ「裂けたパスポート」でマレッタが初めて自分のバイクで旅をする回がありましたが、KREIDLERの50か80に乗ってました。羅毛豪介の趣味・・いや御厨さんの趣味だったんでしょうな。

    Posted by akira isida at 2008年08月15日 04:26
  6. 仰せの通り,YAMAHA の場合,第一作の YA1からして DKW の模作,YD は ADLER,60年代末までの諸作は Kreidler と,かなり強くジャーマンデザインに傾倒していますね.バイクの場合はデザインとエンジニアリングが密接ですから,技術的に影響されたエンヂンだけパクるということが為辛いと見えて,尚のこと丸ごと似て来ますな.

    これが似て来なくなるのは,やはり70年代になりましょうか.原付で言えば FS1の頃から既に60年代 YAMAHA GP レーサーのモチーフを直接引用することが始まっていますし,今回の RD も,タンクの造形を始めとして各所に自社の過去のレーシングマシンの引用が見られますな.そのへんがまた,「(他家のように時流に右顧左眄することがなかった) 栄光のレース歴を持つ家柄に生まれた」ということで,「小娘の癖に名家の令嬢と云うことでプライド高く気も強く」としたわけでございます w

    > 裂けた旅券
    ありましたなぁ w 然るにワタシは,「ノーラの箱船」ぐらいまではよく読んでいたのですが,「裂けた〜」(80年頃?) 以降になると,どうにも絵柄が古色蒼然で耐え切れず,全く読まなくなってしまいました.特に「ケンタウルス」を一読して大閉口したのがキッカケかと思い出します.(ワタシ,キャラクタの着てるものがダサいと,それだけでカオを顰めて本を放り出してしまうのでございます)

    特にあの頃は大友や江口が出て来た頃で,御厨はいかにも旧世代の絵という感じがしてしまったところが損だったかと.同じ絵柄古色蒼然キャラダサでも,星野之宣のように SF なら,そう我慢出来なくもないのですが.
    Posted by 「い」 at 2008年08月15日 22:33
  7. YAMAHA(GK)とKRAIDLERの近似性に気がついたのは実は70年代後半で、タンクとシートの上面を無理やりツライチにするとか、タンクのグラフィックをサイドカバーにつなげる手法などに過剰さを感じたものですから。

    「裂けた旅券」は70年代後半のビッグコミックスピリッツの連載です。当時は青年コミック誌で活躍していた人達の最後の徒花が咲いた時期でありまして、スピリッツは他にも小池一夫とか平野仁とか池上僚一が書いていました。仰せの大友や江口が出てきた時点で、劇画は終わりましたねえ。
    Posted by akira isida at 2008年08月18日 22:10
  8. > タンクとシートの上面を無理やりツライチに

    当時勉強中だった頃のワタシの記憶が確かなら,70年代後半に各社が次第にそういうデザインに移行したのは,70年代初期の ESV 実験による知見が由来だと思います.つまり衝突時のライダーの下腹部保護のため,従来のようにシート前端とタンク上面に大きな段差を付けるのは好ましくない.ということが顕かになり,特に逸早くその傾向を取り入れて製品に反映したのが,日本では YAMAHA.ということなのではないかと.具体的には77年頃の GX 250〜500,RD 125〜400 あたりが典型ですね.

    ただ,そうすることによって相対的にシートが高くなり過ぎ,また,上端高さを抑えられたタンクは,容量確保のため角張って,かつ下に伸びざるを得なくなったことから,徐々にサイドカバーとのデザイン・インテグレーションを意識したマッスの捉え方が定型化した.…という流れだったと思います.

    が,これも数年の間の未成熟な知見で,80年代になると,シート前端やタンク形状を工夫する事で,必ずしもシートとタンクはフラットである必要は無い.ということになったのは,80年代の実車のカタチを見れば,どなたもご納得行けるかと.

    余談ですが,70年代後半当時はそれと同時に,ハンドルバー廻りのクラッシュパッドや突起物の除去の重要性が喧伝されていたもので,殆ど無策だった日本メーカーをよそに,BMW の R100RS などはステアリング廻りを殆どフルカバードの滑らかな形にして安全性をアピールしていましたが,このあたりはすっかり忘れられてしまっているかのような現状は,いささか不安になるところです.例えば T-MAX など,フロントフェアリング内側があんなに鋭角的造形で本当に大丈夫なのでしょうか.衝突して飛ばされると思い切り胸や腹をやりそうな気が致しますね.

    ごく最近,著名 GP ライダーが殆ど微速に等しい速度で事故って胸を潰されて死んでますが,あれは T-MAX のどこにぶつかってああなったんでしょうかねぇ.それともぶつかったのはバイクでない他のところなのか.気になります.
    Posted by 「い」 at 2008年08月19日 00:25
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