車にも焼酎を与えてみました (嘘)
さて欧州車にお乗りの方なら周知の事と思いますが,日本に輸入される欧州車の殆どはハイオク仕様でございます.ウチのハイパーオンボロイタリア車ですら生意気にもハイオク指定です.之が唯でさえ乏しいワタシの財布の中身を真綿のように締め上げて行く訳ですな.油断大敵エンジン掛らず,石油の一滴血の一滴.です.
然るに何故欧州車が悉くハイオクなのか.之はヨーロッパの人がオカネモチだからではありませんで,単にガソリンの規格が違うのが原因ですね.概ねヨーロッパのガソリンは牛丼の如く特・上・並の3ランクが売られているわけですが,普通の乗用車は大凡 上ランクでありまして,それが95オクタンです.この辺りが一番品質とコストのバランスがいいらしい.矢張り何やら牛丼に似ています.因みに特ランクは98オクタンぐらいだった筈です.そういう富豪仕様にはトント縁がありませんので詳しく知りませんが.
方や日本のレギュラーは86(ってのはもう流石にないか)〜91オクタンぐらい,ハイオクは98〜100オクタンですから,丁度どれにも当てはまらない.仮に並と特盛しか無い牛丼屋を想起して頂ければこの困惑は諸兄には御理解頂けると思いますが,それで数字を適当に切り上げてハイオク仕様ってことにしちゃっている.並無し.特盛だけの牛丼屋ですな.之はヒドイ.
こういうことを書きますと「そんな些細な値段の違いを気にするなら外車なんか乗るな貧乏人」と言う声が聞こえてカッと致しますが,これって統合失調症の初期症状でしょうか.金の問題では無いっ.特盛頼んでおいてヌケヌケとごはん残す奴を見ると後ろ頭を殴りたくなるのと似た心理であります.
いや心理学の話ではなくて経済学の話,いやそうでなくて化学の話をするつもりでした.結論だけ記しますと,90オクタンのガソリンと100オクタンの奴を等量混ぜますと,理屈の上では凡そ95オクタンぐらいになる勘定でございます.
本当にそうか,とお思いになるのも無理はありませんが,そうなのです.
そして,実はワタシ,此れをば日常実践しております.
昨今では田舎にもセルフスタンドという便利な施設がありますので,まずレギュラーを10L入れる.然る後にハイオクを10L入れる.普通のスタンドしか無かった頃は,スタンドAでレギュラーを入れ,ちょっと離れたスタンドBまで走って今度はハイオク10L.というマワリクドイやりかたをしていましたが今は楽です.
ワタシは設計屋のハシクレでもあり,「オーバースペックはアンダースペックより好ましくない」という至極当然な教育を受けておりますため,95オクタン仕様のクルマに100オクタン燃料を入れるというガサツな運用に技術倫理的抵抗があります.お客様に5オクタンも違う100オクタンを入れさせるからには,其のエンジンは100オクタンを想定した点火時期なりヴァルヴタイミングなり燃料噴射タイミングなり燃焼室形状なり圧縮比にすべきじゃありませんか.畢竟台数売れない日本市場が軽視されてるってことなんでしょうが,そんな横着なことやってたらいつまでも売上伸びないと思うのですが.
…なんて慨嘆も今の可変ヴァルヴタイミングとかノックセンサーなどの発達で過去の嘆きとなりつつありますけどね.
【余談】コレ読んだ事無かったなぁ.「あの」富塚先生の書いた「機械科以外の学生の教科書または一般人の参考書」ってのはどういうのなんだろう.興味湧きます.
てぇか名著として名高い「生活の中の科学技術」も「機械工学通論」も未読だ.機械科出身じゃないもんで意外とそんな基本中の基本も逸読のまま馬齢を重ねたのは我ながら忸怩だ喃.【/余談】
ともあれ此のマゼガソリン,やってみれば案ずるより産むが易し.ちゃんと走ります.FIATの数車種に限らず,かつて乗っていたMercedesでもPEUGEOTでもCITROENでもRENAULTでもOPELでもAutobianchiでも同様に試しました.流石にFerrariのときは借り物でしたんで自粛しましたが,てかFerrariって元々98オクタン指定だったっけ,まぁ試した範囲ではハイオク100%の時と比べても何の異常も無い.そりゃ本来の指定仕様通りなんですから当然です.
#ああ,当り前な話ですが,4速に入れたまま速度を落として行ってノッキングが起きる速度は.ってな比較をやれば劣ります.けどまぁ4速でガタガタ言わせながら走ってるような状況は図示熱効率とあまり関係ないですし,てかそんな乗り方する奴ぁヘタ(略
こうして20L入れる毎に100円儲かりまして満タン1回に換算すれば200〜400円である.この差はお酒1〜2合,乃至はヤキトリ屋台のサケ一本,或は中程度ワイン1〜2杯に相当する.断じて等閑視出来ないコスト差ではありませんか.
どうも始まりは純粋に技術理念の問題でしたが,斯して今はスッカリ倹約手段に掏り替わっているような状況を呈し居り…
……いやはや貧乏というのは誠に貧乏臭いものですなぁ.