2006年02月25日

羊頭狗肉しょうゆ味

今日はちょっと手廻りが忙しかったのでカップラーメンなどを食べておりました.平素は少なくとも生麺を茹でないと断じて納得しない「い」には珍しいことです.マルちゃん 麺づくり【鶏ガラ醤油】×12個
まぁアレですこの「マルちゃん 麺づくり醤油」麺はさておきスープはまぁまぁですなウン.89円でこれなら上々だ.ワタシは関東人なので,こう云う何の変哲も無いトリガラ風醤油味が一番舌馴染みが良いので御座居ます.家系ラーメンだか何だか存じませんが今出来のシツコイのは苦手でありまして.

とまぁ醤油ラーメンを手繰りながらフト想を空に遊ばせますに,もし,地中海世界が15世紀の大航海時代初期に日本の醤油を「発見」していたら,定めし世界史はドラスティックに変わっていただろうなぁ.と云う妄想が湧いて出まして,つまり,ヨーロッパ人がアジアに進出するキッカケってのは,領土的野心もさることながら,何より東南アジアで採れるクローヴ,シナモン,ナツメグ等の香辛料が肉の保存抗菌に不可欠で,それが貪欲狡猾なるモスリム商人によって途方も無い高価格に騰貴していたからでございますが,考えてみますと醤油というものは此れ単体で抗菌/防腐/消臭能力があります上に肉,魚,野菜を問わずに使えますし特に上記のスパイスを要しない.

これに生姜でもあれば殆ど当時では完璧と言うか,醤油を制する者は世界を制す.となったのではないでしょうか.いや決して大袈裟ではない.現に昨今,醤油の世界総生産量は実に600万KLに達し日本の生産はその1/5強に過ぎず,カップヌードルの如きは年間200億食を出荷すると言うではありませんか.人類史上,人工の調味料で斯くも偉大な成功を収めたものが他にありましょうや.遅まきながらも醤油は確実に世界を変えているのです.

さてそこで今日ご紹介する読み物は.

世界の伝記 7 暗黒の海にいどむ -マゼラン

であります.イヤ実は「い」は此の本,35年前の小学生の時に読んだっきりでして,それを記憶だけに頼って書評するという無謀を敢えて行うわけですから読んでみたら全然違ってる可能性もありますがまぁそれはそれで.

さてマゼランがどのような人物であるかは皆様も良くご存知と思いますので説明の煩は避けますが,この本の印象的なところは,大航海時代の黎明期,マゼランの産まれた故郷ポルトガルが,如何に過酷な風土で貧困であったか.というところから始まる.
確かにそうかも知れません.今のポルトガルは大航海時代の遺産があるからこそ辛うじて先進国のうちですが,これが無ければモロッコやアルジェリアと大差ありますまい.

そして作者は筆を進めて,香辛料の無い食生活が如何に索漠かを述べるのですが,なんでも秋に屠った肉をば塩漬にし,陰気臭い雨の降り続く冬の間中,ずっと之を食い続けるのだそうで,いやはや「スペインの雨は主に平野に降る」らしいですがポルトガルもそうなんですかね.聞くだに不味そうです.失敗してしまったパンチェッタを厚焼きにして食うようなものではないでしょうか.あゝ此処に醤油があれば.と狂おしい思いに駆られるところです.

後のマゼランは,その卓越した操船技術でマゼラン海峡を突破した後,太平洋の大きさを読み誤り中部大平洋上で深刻な飢餓に見舞われ,船具のベルトに使われている牛革を塩水で煮含めて食うような悲惨となるわけですが,ここでも醤油さえあれば,なんとか食えるものが出来たであろうに,実に遺憾でありますね.

そして遂にマゼラン艦隊はマリアナ諸島の列島線に到達,ここで紀州から船出したまま航路を失って迷走していた醤油船と出会い,その神秘の調味料に魅せられたマゼランは醤油職人を乗せて急ぎセビリアに凱旋帰還.

ここに人類初,前人未到の世界一周航海の偉業が成し遂げられたわけですがそれにも増して,何の変哲も無い豆から無尽蔵に造られるスペインの醤油(のちブラジル産が主流になる)はタチマチ16世紀の欧州世界の食文化を一変し,香料貿易で莫大な利益を上げていた既得ムスリム商人の急速な没落,そして製法を秘匿したまま醤油生産を独占し繁栄を恣にするスペインと,醤油を悪魔の血として忌むローマ法王庁の深刻な確執,抜け駆け的に日本醤油の直輸入を企む英蘭プロテスタント勢力との激突.と,激動の近代史が幕を開け……

……るわきゃありません.

【注】
史実の醤油は,其の少し後,鎖国時代になってからオランダ東インド会社が少数ながら輸入し,ルイ14世がお使いになったとか,ディドロの「百科全書」に記述があったりしているようです.たぶん需要はあっても既に鎖国後.輸出量も少な過ぎ,また高価過ぎて普及には至らなかったのでしょうか.斯様に僅かな擦れ違いで醤油の世界雄飛が遅れたことを悲しむ…べきかどうかは微妙ですが.

【関連エントリ】
目に青葉
もやし -1
精進ラーメン その2
魔窟逍遥

posted by 「い」 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録
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