2006年04月17日

磨いて磨いて

大分更新の間隔が開きました.
皆様はよもや「あの莫迦はウッカリ抱え込んだスクータに梃子摺ってブログの更新どころではないに違いない」などと思ってはおられないでしょうな.

勿論然らず.スクータの修理が如き,「い」には易々たるものでありまして,余程の珍事でも出来すればお笑いの種にも致しましょうが,スクータのレストア日記などというのはどうも石油臭くて気が進まぬ故,他所のサイトでも検索して見て頂いた方が余程実用になりましょう.

では何故,斯うも更新が滞ったかと申しますと,途方も無く手間を要する作業をしていたからでございまして,非常に古い話になりますが,以前にご紹介致しました木曽の木地挽物の器.あのエントリでワタシは『もうひとつも見事なんで,そのうちお目にかけましょう』と書いておりますが,数ヶ月経っても一向にその約束が果たせておらぬ.してその理由は.

つまりワタシは其の器を「名器ほど日常に使うべきである」という信念に基づきまして,うっかり老父老母に,「フルーツボウルに使うといいよ」と,普段使いに供させておりましたところ,傷んだミカンとか黒いバナナとかを無造作に放り込んで手荒に扱った挙句,染み出た汁をすぐに拭き取らないまま,でっかいシミ汚れがあちこちに付いてしまったのでございます.

全くあの年配の老人というのは,斯う云う上等なモノを長く大事に扱う仕方をてんで知りませぬなぁ.序でに申せば,電話の掛け方応対,立居振舞礼儀作法,料理の作り方からテーブルマナー,着物の着付けネクタイの締め方,挨拶や口の利き方まで,悉く芳しからぬのが戦中の年代な気が致しますね.畢竟マトモな人はみんな戦争で死んでしまったのだ.
父母とは申せ,あんな車夫馬丁の輩にも等しいところまで劣化してしまった国賊老人どもを生かしておく為に莫大な年金税金公的資金を巻き上げられて呻吟しておる若い人達は非常に気の毒でございます.本当に生かしておく甲斐が無い.いやワタシもか.

とまぁそのように呪詛の言葉をブツブツ呟きながら,汚されてしまったものは仕方なし.なんとか気にならない程度までクリーンアップせねば一生の悔恨.なんせ素木の挽物にイイ古色が付いて味わい深くなるまでには幾年も掛りますので,今やっておかねばワタシの寿命が終わってしまいます.

で,どうやって染み込んだ汚れを取るかと申しますと,実は素木の木材というのはシミ取り漂白剤というのが建築用として売られておりまして,其れを使えば割合に奇麗には成ります.しかし生憎と建築用でありますれば,食器やテーブルウェアの類には使ってはイケナイと明記されております.とは云え背に腹は代えられぬ.意を決して使いましょう.
なぁに使った後で充分に水に浸けて薬剤を抜けば,直接に料理を盛るわけではございませんので大丈夫.かと.もちろん真似して死んでもワタシは知りませんぞ.

昔話の余談ですが John Hejduk か Michael Graves か Richard Meier だったか,たまたま建築場所が美観の法的規制で木の外壁しか使えないにも関わらず,どうしても建物の外壁を白くしたかったため,素木の外壁に漂白剤をぶっかけて無理矢理白くした.ってことがあったと覚えています.
イヤハヤ猛烈に塩素臭かったんじゃありますまいか.今そんな工事やってたら異臭騒ぎになって警察呼ばれましょうな.

して漂白が済んで数日間水に浸けて薬剤を抜き,さらに罅が出ないように慎重に陰干ししたところで磨きに掛ります.磨きにはサンドペーパーなどを使うと仕上りの肌がよろしくありませぬ故,是非ともトクサを使うべきなのですが,意外と此れが売っておらない.東急ハンズにあることは解っているのですが70kmも離れていてはちと面倒.

トクサこれがつまりトクサでございます.董の立ったツクシンボみたいですが表面は硬い.素木の磨きは此れに限ります.

さて困った.どうしたものか.と友人の植木屋の前を通り掛かりましたら,将に其のトクサが無造作に引き抜かれて放り出してある.
なんでも生け花用に栽培していたのを,植え替えの為に全部引っこ抜いて棄てるそうで天佑.早速タダで貰って来て日干しして乾かし,切り広げて平らに致します.本当でしたら新鮮なうちに軽く茹でて干して使うのですが,引っ込抜かれてから時間が経過していたようなのでそのまま干しました.あとはただもう此奴でヒタスラにコツコツと磨いて行くわけで.と申しますかここ1週間そればっかやっておって指紋が摩滅しかかっておりますよ.

……長文に草臥れたことと存じますので後編に譲る事と致します.

【関連エントリ】
磨いて磨いて磨いて
雪です

posted by 「い」 at 18:38 | Comment(3) | TrackBack(0) | デザイン
[この記事へのコメント]
  1. 蜜蝋、調達いたしましょうか?
    我が家から車で5分少々のところに、おじさんが趣味でやってるような木工芸所がありまして、そこに売ってます。
    つい1週間ほど前に確認しましたので確かです。
    と言いますのも、私、今、木製のバターケースを作成中でその木工芸所にお世話になっているんです。
    本当は木工作家・三谷龍二氏の木製バターケースが欲しかったのですが、三谷氏のバターケースは大変な人気商品で予約しても1〜2年待ちという状態。ないと言われれば余計に欲しくなるのが人情ってものですから「買えないなら作ればいいじゃない」ということで、ちまちま木を彫ってるわけです。
    ええ、わかってます。無謀です。
    ついでに言えば、方向が間違っています。
    でも。
    木を彫る作業そのものにハマりつつあります。
    Posted by るく at 2006年04月18日 12:36
  2. おおっ.これは願っても無い.是非お願い致します.
    急いではおりませんで,と申しますのは,ウチの国賊老人どもは,この名品に留まらず,イタリアのパスタボウル,サラダボウル,先祖から伝わったケヤキの盆,あらゆる木食器を台無しにしてくれやがったものですから,あとからあとから磨かねばならぬ物が出て来るのでございますよ.指紋が摩滅どころか指自体が摩滅して骨が見えて来そうな勢いであります.

    なお,よく考えましたら此のネタは1回で終わらせるのは勿体無いので,加筆して写真も撮り,前後編構成に直したいと思います.ご高覧頂ければ幸甚.
    Posted by 「い」 at 2006年04月18日 20:11
  3. 承知いたしました。
    必要な時期になりましたらお教え下さいね(^^)
    それまでどうか、磨き過ぎてご自身が首だけになりませぬようお気を付け下さいませw
    Posted by るく at 2006年04月19日 17:27
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