2006年06月19日

ハンバーグ

………うーむ………

ボンナペティ店頭
今日は外出中に昼飯時刻になったので珍しく外食なのですが…テーブル前に座ってナイフとフォーク握りながら何を唸っているかと申しますと,

いえね,もしかして,「い」の年代って,もしかして “物心ついた時には既にハンバーグがあった” 最初の年輩なのか.と考えておったんですよ.そりゃぁもちろん,其れ以前にもレストランにはハンバーグは存在したに決まってますが,つまり此の街の様な田舎でも一般に普及した食べ物だったかどうか.ですね.

ワタシよりやや先に生まれた人たちになると,幼児期には未だ高度経済成長期が始まってませんわな.そもワタシの生まれる直前と申しますと1950年代.洋食が得意な主婦だったらハンバーグぐらいは家庭で作れたとは思いますが,当時って合挽の挽肉でさえ結構贅沢の部類でしたしねぇ.まして当時の主婦の年配が育ったのは戦前戦中の統制時代ですから,あまりそういうのが得意とは思えぬ.

試みに“マルシンハンバーグ” のサイトを見てみますと,アレが発売されたのは1962年.やはり高度経済成長と期を一にしておる.イシイのハンバーグはもっと後,冷凍食品のハンバーグはさらに後で1970年前後でしょうか.なんせ1960年代初頭までは家庭用冷蔵庫というのは電気式でなく氷を入れて使う保冷箱に過ぎなかったので,冷食は業務用だけだった筈です.


何故こんな事を考えているかと申しますと,ワタシの母は,今でもハンバーグをよく作る割には,下手なんですな.その下手さ加減というのは,知識がどうこうではなく,さりとて味覚に問題があるわけではなく,彼女の脳内に「正しいハンバーグとはこういうものだ」という確固たるイメージが今なお鮮明に結び得ていない.と言う事に起因するんではなかろうかと思うわけです.

具体的に申しますと,「昔からの母のハンバーグ」は,まずタマネギの扱いが違う.最初に微塵切りのタマネギを炒める.然るに,「炒め」ただけで終わってしまい,火が通ったら降ろしてしまう.また,ナツメグを使わない.当然,出来上がったハンバーグの断面には微塵切りタマネギが割にハッキリ見えている.

方や「昔からのレストランのハンバーグ」は如何かと言うと,御茶ノ水「小川軒」とか,日本橋「たいめいけん」の様な有名どころを持ち出すまでもなく,クラシックな仏蘭西料理系のハンバーグを想起して頂けば瞭然ですが,断面に殆どタマネギが見えてませんでしょ.あれはローストしたタマネギを使ってジャムみたいになるまでタマネギを炒めるんでしたっけか.

これを以てどういうことかと考えますに,母のハンバーグのイメージと言うのは「つくね」に起源を持つのではないかと思うわけです.イワシのつくねとかトリのつくねとか.
「つくね」として観れば中に刻んだ野菜が見えていないと間抜けです.どうも母の作る「ハンバーグ」というのは,そのイメージの延長線上にあるような気がしてならない.あながち其れが悪いというわけではないがハンバーグとしては違う気がする.

それかあらぬか,ワタシが子供の頃ウチでは,月に3度くらいの割合で亡父が我々を引き連れて街場に出まして,昔ながらの洋食屋で食事をするのが習慣でありました.そこで「ハンバーグ」とか「ポークピカタ」とか「決してトンカツでないカトゥレット」を食べるのでございます.亡父は多分,若くて事の至らぬ自分の妻に正しい洋食を教育する意図があったかと今では思います.結果的には奏功しなかったわけですが(笑)
此の習慣は父が急死してからも暫く続き,おかげでワタシも誰に習うともなくナイフとフォークで喰うことにも馴れて今に至ります.

其の頃,此の伊東の街には「マルマン」という古風な洋食屋がありまして,映画館と画廊を一緒に経営しておりました.まずは小津でも溝口でもゴジラでも宜しいが映画を観ましてその後でレストランに入る.時々,思い出したように痩せた料理長の爺が白衣で出て来て料理の加減を伺って回るような,当時にしても古色蒼然たる洋食屋でございます.食事の後は良く解らぬが画廊の絵を観て帰ることになっておるのでして,無論我が家で喰いに行く位ですから高価でも高級でもありませんで,単にそういう古い流儀の店に過ぎぬのですが,此処の料理長が老いぼれて引退した後は,「OX」という店に贔屓を変えてございます.

「OX」の若き料理長は実に愛すべき人柄の方で,オートバイ好きの趣味でも意気投合しておったのですが,後に結核で夭折して,もうおりません.よって此の街では,往年のような旧来の洋食を喰う機会は乏しくなりまして,その系統のものを食べたい場合は,いっそ銀座の「煉瓦亭」にでも行くか或いは…

ハンバーグ
…と回想に耽り乍らいま食べているのは,伊東桜木町「ボンナペティ」のハンバーグとビーフシチューの相盛りランチ.この街で今,昔のように滑らかな舌触りのドミグラスのハンバーグは,此処が最良なのかも知れませぬ.まだ新しい店だと思っておりましたが,良く考えてみれば開店直後に喰いに来たのは高校生の頃だから既に30年近く経っております.今まで知りませんでしたが此処の主人は,熱海「スコット」の出であるとか.「スコット」でしたら大谷崎や志賀直哉御用達の老舗洋食店ですから傾向が似ているのも宜なるかな.

まぁ,多寡がハンバーグ如き食い物でも,40年も喰っていると色々な記憶が蘇って来るものですなぁ.昔はものを思わざりけり.…ってこういう時に使う言葉とは違うか.

【06.10.19 追記】
つい先日,20数年ぶりに熱海の「スコット」でハンバーグを食う機会がありまして,食って思いましたのは,どうも今は「ボンナペティ」の方が美味いのではなかろうか.まぁワタシの味覚ですから例によってアテにはなりませんが.

【07.08.02 追記】
いつも見ている読売新聞の「うたた寝帖」に,神田淡路町の「万平」のハンバーグが取り上げられておりました.懐かしいなぁ「万平」.ここもワタシの行っておった学校の近所でありますれば,時々通ったものでありますね.尤もここんちは店の見掛けの割に価格帯が上目でありまして頻繁には入れぬ.

ここのハンバーグは,ハンバーグがタマゴでくるんであるのが特徴ですが,実はワタシが「トンカツ屋」「タマゴでくるむ」で一番に聯想するのはここではなく,東高円寺の「ぽぱい」の安くて美味いポークピカタ定食でありまして,まだあるのかなぁ「ぽぱい」.無闇に頑丈な体格の主人と,対照的に小さいカミさんが印象的だったが,もう25年も経ったのだなぁ.

【参考外部リンク】
talelog による他の人の「スコット」レポ
talelog による他の人の「万平」レポ
talelog による他の人の「ボンナペティ」レポ

posted by 「い」 at 20:00 | Comment(1) | TrackBack(2) | 呑み喰い
[この記事へのコメント]
  1. 先日,この「ボンナペティ」に行きましたら,残念かな閉店しておりました.
    すぐ横にココスが出来たのが悪かったのかのぅ.
    Posted by 「い」 at 2008年05月09日 01:32
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Tracked: 2007-04-06 03:36
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