2006年07月05日

おみおつけ

あ゛〜味噌汁は美味ぇなぁ.やっぱ日本人には味噌汁だよなぁ……

…イキナリ余談ですが,江戸時代の独身者はどうやって味噌汁を作っていたか.
いくら悠長な昔でも,いちいちカツブシやニボシでダシを引いていたわけではないようです.一書に拠ればどうやら江戸時代にもインスタント味噌汁というのはあったようで,味噌をダシでこねて団子にしたものを売っていたらしいですな.もしかしたら干しワカメなども入っていたかも知れぬ.コレにお湯を注いで溶けば寂しい一人暮らしの熊さん八っつあんにも熱々の味噌汁一丁上がり.いやぁ天が下には新しきもの無しですね.

それはさておき,口の皮べろーんとなるぐらい熱い味噌汁を啜るとき,不行儀にも「あ゛〜」と思わず感嘆の声を漏らしてしまうのはワタシだけではありますまい.よくぞ日本に生まれけり.

いや待て,「日本人なら味噌汁」という偏狭な民族主義は宜しくありませんな.自己批判致します.美味いものには国境はない.少なくともそう信じたい.
まぁ自己批判は措いても,かほど然様に味噌汁の誘惑は強力でありまして例え三食毎回喫しても飽きる事は無からん.味噌は身体にも良いと聞きますし.

ところが「い」の場合,思わぬところにボトルネックがございまして,すなわちワタシは米糠アレルギーである.と言ってもごく弱いアレルギーなのですが,それでも三食ゴハンと味噌汁を続けて暮しておりますと明らかに体調が乱れて参ります故,まぁゴハンは1回1膳/日と自主規制し居ります.残り2食はパスタとパンが主食になるわけですね.


ではパンやパスタで味噌汁を喫すれば良いと仰せになるか.
それは尤もですが,そうすると今度は味の調和の問題が出て参ります.
味噌汁はどうもやはり今ひとつパスタやパンには合わぬ気がする.昔の海軍兵学校では,朝食のメニューは食パン一斤に味噌汁だったそうですが,馴れの問題とは云えやはり違和感は拭えぬ.パスタやパンに調和する味噌汁と云うのは作れないものでしょうか.例えばミネストローネのように.

然様.その叩き台として今回取り上げるのはミネストローネ
コレを和風のアレンジではなく,あくまでもイタリア人が味噌を使って作ったイタリア料理のつもりで作ってみる実験.果たしてパンやパスタに調和する味噌汁は作れるものでしょうか.

まず,味噌汁の現状分析から始めましょう.味噌汁は何故ああも美味いのか.
すなわち,日本の味噌汁は,味噌の旨味であるグルタミン酸と,カツオダシの旨味であるイノシン酸の相乗効果で旨味を高めておるとの事.こちらの発表によれば,
『グルタミン酸に対し、イノシン酸を加えると15%くらいまでは旨味が直線的に強まり、最高12倍程度になるといわれており』
とあります.12倍もドーピングされているとは敵は中々に手強い.

一方,トマトのミネストローネはどうか.そもトマトの旨味はグルタミン酸とアスパラギン酸で構成されるらしく,「トマトは地中海地方の味噌・醤油」と心強いスローガンが掲げられたカゴメのサイトによれば,
『「グルタミン酸」と「アスパラギン酸」が4:1の割合で含まれるとき“最もトマトらしい味”になる』
との事ですので,これを味噌ベースに置換して考えてみます.即ち,

味噌のグルタミン酸+カツオダシのイノシン酸=味噌汁
でなく
味噌のグルタミン酸+任意食材のアスパラギン酸

と置換することで,トマトベースの料理のスキームに大きな変更を加える事なく,かつ異種アミノ酸の相乗効果を保持して味をまとめることが出来る筈.…まぁ理屈の上では.

そこでアスパラギン酸を多く含む食材を捜してみますと,ミネストローネに使えそうなのは,アスパラガス(これは当然ですな.アスパラギン酸ですから),タケノコ,発芽大豆あたりでしょうか.アスパラと云いタケノコと云い発芽大豆と云い,どうもアスパラギン酸と言うのは植物の若芽に多いと見えますが,今回は普通にアスパラガスでやってみます.時間があれば大豆に水掛けて置いとくだけで済む発芽大豆がいちばん安上がりでしょうか.然う云えば大豆の入ったミネストローネというのはよくありますな.枝豆なぞも良いのだろうか.

ではトマトを入れない以外は普通のレシピでミネストローネを作ります.友達が呉れた大きなズッキーニや余っていたセロリの葉っぱも投入致します.スープストックはヱスビーの野菜ブイヨンを使用.普通のコンソメでもいいのでしょうが,今回は特にコンソメに含まれる肉起源のイノシン酸を控えて実験の性格を明瞭にしたいと思います.ヴェジタリアン・レディーでもありますしね.

味噌を投入
さ,では最終行程.トマトに換えて味噌を投入.味噌を入れたら煮立てない.というところだけは日本流ですが.

味噌ミネストローネ
完成.トマトの赤味がないので外観はミネストローネ・ミラネーゼに似ていますな.では,定石通り粉チーズを振ってパンと併せて喰ぅてみますぞ.

…うむ.コレは普通に美味い.元からこういう料理があったかのような自然な味でございます.懸念していた味噌の香りとチーズの風味のコンフリクトも無く,パンとの相性も良好.特筆すべきは,粉チーズ以外に動物性タンパク質を使っていないにも拘らず非常に旨味が濃いことですな.意図した通り異種旨味成分の相乗効果が奏効していると思われます.

また,ミネストローネというのは冷製にしても食べる事が多ぅございますが,コレは冷やしてもイケるかも知れませぬ.飽和脂肪酸の含有量も極小なれば冷やしても不快な脂の固まりは出来ませぬでしょう.

というわけで久々に赫々たる大成功でございます.コイツはこれから私的の定番になるかも知れぬなぁ.

【2007.08.16 追記】
excite bit ニュースで「トマトの味噌汁」は本当に美味しいのか という記事がありまして,文中に >『某料理書によると、トマトに含まれているグルタミン酸が味噌汁のダシに使うかつおや昆布のイノシン酸と一緒になることで』 とあるのだが,これはチト腑に落ちぬ.
確かにカツオダシの旨味成分はイノシン酸ですが,コンブダシは違いますな.それに上記本文で述べたようにトマトの旨味主成分もグルタミン酸でありますから,これと味噌のグルタミン酸では同種同士ですので,相乗効果は期待できぬのではないでしょうか.

理屈の上では,トマトの汁物ならば,カツオダシや海苔ダシ (ノリスイ) のイノシン酸と合わせれば効果が期待できるのではないか.つまり味噌汁でなく,「お吸い物」であれば理に適っておる筈でございますね.
やるとなれば,グルタミン酸が抜群に多く酸味の少ない「シシリアンルージュ」を使ってみたくなりますが…さてどうでしょうかな.

【関連エントリ】
シシリアン・ルージュ
もやし -1
もやし -2
時鳥は措いて初鰹
精進ラーメン その1

posted by 「い」 at 20:00 | Comment(5) | TrackBack(0) | 呑み喰い
[この記事へのコメント]
  1. 味噌ストローネ、今度作ってみようっと♪

    味噌とチーズって合いますよね。

    我が家ではにんにくとオイルでソテーした鶏もも肉に、水溶きして少し砂糖を加えた味噌を絡め、その上にチーズを乗せたものを時々作ります。
    予熱でチーズがとろりと溶けたら食べごろ。
    お皿に盛ってから、一味唐辛子を振り掛けると、ピリッとして美味なのです。

    あ。
    全然話は違いますが、先日、パンチェッタときゅうりの糠漬けは同じ匂いがすることに気付きました。
    もしかして、豚肉を糠漬けにしたらパンチェッタができたりして。。。。?
    Posted by るく at 2006年07月14日 13:59
  2. 実は今回の実験で一番困ったのは,野菜ブイヨンの入手でした.Maggiの野菜ブイヨン
    http://www.food.nestle.co.jp/maggi/bouillon/bouillon_3.asp
    など,ごくありふれた量産品だと思うのですが,何故か此の町では全く売っておらず,結局高価なヱスビーの奴を使わねばならなかったのです.此の町のヴェジタリアンの人はどうしておるのかのぅ.

    チーズと味噌の相性ですが,最初にワタシが心配していたのは,どっちも発酵に伴う風味なのでぶつからないか.と思ったのですね.案ずるより産むが易しでしたが.

    糠漬けというのはモロにワタシのアレルギー物質ですから試すわけには行きませんが,このサイト
    http://www.b2ctown.net/nukazuke/index.html
    を見ますと,肉や魚介類も糠漬けに出来るようでありますねぇ.ふぅむ,鶏腿糠漬というのは矢張りパンチェッタの風味に似るのだろうか.
    Posted by 「い」 at 2006年07月14日 19:25
  3. > チーズと味噌の相性ですが…

    ナチュラルチーズの専門店フェルミエではチーズの味噌漬けなるものがスタッフ内で一時期流行っておったそうです。
    味噌とチーズで試行錯誤して販売にこぎ着けたものもあるそうですが、各人の好みで少量冷蔵庫の中に常備されいるとも聞きます。
    私も百貨店のブースで一回ほど見かけたことがあります。たぶん、会誌をあさればどんな味噌とどんなチーズが相性がいいか記事があったと思います。
    オーブン料理の残渣を翌朝用のみそ汁にぶち込むことがありますが、チーズは良い風味を出してます。
    Posted by "ね" at 2006年07月14日 19:56
  4. なるほどぅ.色々あるものですなぁ.
    しかしまぁワタシの場合本来の目的は,主食たる「パスタやパンに調和する」というのが第一義ですから,チーズはそのまま食えばいいわけでして,敢て味噌に漬ける必要性はないのでございますね.それで和食との親和性が高まってはむしろ不都合とも言えるわけで.

    しかし,味噌とチーズの相性の善し悪しが解って来ると,「味噌チーズ中華麺」のような展開も考えられますので,それはそれで興味深いことではありますね.
    Posted by 「い」 at 2006年07月14日 20:38
  5. 興味深いお店ですね。
    飛騨高山かと思えば秋田だし、いろんなものを漬けてるし。
    なんでもかんでも「とりあえず漬けとけ!」って発想なのかしら?

    自分で実験する前に「豚肩ロース糠漬け」でも取り寄せて味見してみることにします。
    Posted by るく at 2006年07月15日 14:13
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