2006年09月07日

ブーツ

やっと酷暑も落ち着いて参りまして,朝夕などはスッカリ秋の気配でございますね.
かつての「い」は,このように秋が兆すと,発作的にバイクに打ち跨って失踪する事が屡々でありまして,いやぁ行く先も告げず予定も定めずの旅行と言うのは本当に結構なものですな.「予もいづれの年よりか片雲の風にさそはれて漂泊の思ひやまず」ってね.

勿論,不意に失踪と言っても着の身着のままというわけではございませんで,ちゃんと普段からツーリングバッグには旅行用具を詰め,装束も一式揃えて準備オサオサ怠り無く,何時でも姿をくらませるように支度しておったのでございます.
拙宅のあたりがまだ夏の気配が残っているからと言って,軽装のまま成り行きで北国の山岳地帯に迷い込んだりすれば思わぬ寒さで艱難辛苦なんてことがありますからな.

そう云えばちょうど今頃,北海道の大雪山旭岳に行ったとき,同じ日にバスで来ていた学生が最終便に乗り遅れて凍死.なんて事件がありました.ワタシはバイクですから夕方に山を降りたのですが,そいつは最終バスが当時16時だということを知らず乗り遅れ,Tシャツ一丁で寒風を避けようとしてか,バス停横の水の流れてない側溝に身を横たえて死んでいたそうでございます桑原々々.
(ちょっと今,夕方の温度はどのくらいか見てみたら,摂氏3.5度だそうで,明け方はもっと低いに決まっており,こりゃぁ生きて帰れぬのは当然でございましょう)

かほど然様に装備とは重要なモノなのですが,特にバイクではその重要度は普通の旅行の比ではない.そこで,以前はヘルメットを話題にしましたので今度はブーツのデザインのオハナシを致そうかと存じます.およそ足首の保護というのは非常に重要でありまして,何故かと申しますに,足首の中心にある「距骨」という部分は,血管の分布が非常に手薄なため極めて治癒力に乏しく,ここを手荒く叩き割ると,大方は完治せずビッコになるのである.何故そんなことを知っておるかというと,実は何を隠そうワタシ自身がその距骨コナゴナの見事なビッコなのでして,皆様もカタワになってから後悔しても遅ぅございますので要慎されたい.

さて,そもそも良いライディングブーツに求められる機能というのは,
  1. プロテクション性に優れること.特に足首部が重要
  2. シフト操作のため,爪先の柔軟性に優れていなければならない
  3. 踝の側面が車体をホールドするのに都合のいい形状でなければならない
  4. 長さはフクラハギ下程度のところで長過ぎても短過ぎても良くない
  5. 出来る限り軽いこと
…という機能的要求があるのですが,実は,この条件を満たしていればいるほど形状が地下足袋に似てしまうというジレンマがございます.
下に実例を挙げておきますので比較されよ.

■ イタリアの名門alpinestars のブーツ
■ 今ドキの派手な地下足袋

いや機能さえ満たしておれば外見が地下足袋ソックリでも構わぬと仰せの方も居られましょうがワタシは真っ平御免,そういうのでも良いのならバイクなんぞ即座に辞めても悔いは無い.
大体バイクなぞというものは夏はクソ暑く冬はバカ寒く雨が降ればズブヌレになり転べば怪我をして痛い.そんな欠点だらけの乗物になぜ30年も乗り続けているかと言えば,つまるところカッコ良いからでありますね.それ以外の理由など些末なことでございます.

ともあれ美学的な話は横に置いても,さらに公道で使う場合には,上に挙げた4つの基本機能要求の他に,
  1. 通気性に優れること
  2. 強力な防水性,対滑り性があること
  3. ある程度の保温性があること
  4. 長年の使用に堪える耐久性があること
  5. 通常の歩行に支障無きこと
という,相互に矛盾した非常にキビシー要求も加わって参りまして,うっかりすると無闇にゴツくなり,土木作業員の安全靴ソックリになってしまう罠も待ち構えております.またそういうゴツ系の奴を履いてる奴に限ってブーツの手入れが悪い.本人は「使い込んだ味わい」のつもりかも知れぬが傍目には只の汚らしい土方靴にしか見えぬことがよくありますな.

そこまでゴツくない,いわゆるライディングシューズってのも多いのですが,これがまた造った奴を殴りたくなるような安物スニーカーの出来損いみたいなデザインが多く,さらにそういうモデルは何故か多くがベルクロ留めになっておりまして,あれは厭なものですなぁ,脱ぐ時の「ベリッ」という耳障りな音を聞きますと,ワタシはいつも赤ん坊のオムツを換えてるところを連想致します.
だいたいVelcro留めの靴なんてのは子供か年寄りの履くものだと思いますが如何でしょうか.

ついでに申しますと,クルブシより僅かに上の,いわゆるハーフブーツ丈というのは通常の歩行の際に最も疲労度が高いそうで,これは靴の設計の教科書に出ておりました.それに,ハーフブーツってのはフシギな事に,大きな衝撃力が加わりますと,瞬間的に足が変形する所為か簡単に脱げちまうものでして,事実ワタシも幾度か素っ飛ばしたことがございます.転倒の痛みを堪えながら路傍に転がったハーフブーツを拾い上げ,どうやって脱げたのか首をひねった事も.

ともあれそういうダサい履物を履いておりますと,旅先でちょっと小洒落れた料理屋やレストランなどを見付けても,気遅れして気軽に入れない雰囲気になりますし,これが和風の入れ込み座敷だったりしますと,ブーツを脱いだ途端に何やら臭そうな雰囲気も漂って参ります.いや実際に臭いかどうかではなく雰囲気が.でございますよ.

何れにしても地下足袋まがい,またはドカタ靴もどき,あるいは安物スニーカーの出来損い,どれもあまり喜んで履きたくない種類の靴には違いなく,「い」はこの30年間,ずっと頭を悩めておりました.その間に取っ替え引っ替えしたブーツは20足近い.そして未だかつて100%の満足を得られたことは無いわけでして,差し当りの現用品は,

ダナーのブーツ
Danner 55210 のブーツでございます.10年ほど前に米国から取り寄せ致しました.本来は米国海兵隊や特殊部隊が履くモノのようでございますね.当時,国内では7万円ぐらいしておりましたので,円高の頃ですから関税を払っても大分安かった.それでも今のワタシには到底買えない値段でありますが.
尤も,現行型は少しモデルチェンジされて値段も下がったようですな.そう言えば革靴と言うのは未だに関税が自由化されておらぬようで,どうも特定業種に絡む利権の臭いが致しますが.

写真ですとややゴツく見えますが履いてみると甲が薄いので実際はそれほどでもない.ちょっと驚くのは軽さでありまして,ハイカットのバスケットシューズよりやや重い程度しかありませぬ.
ソールはビブラム製の横リブパターンでヒール無し,これは本来は苔むした岩上を歩くような用途だと思いますが,パターンと形状が良いせいか濡れたステップでも滑りにくい.むろん張り替え可能.インナーはゴアテックスで,ほぼ完全防水,履いたままズブリと水に突っ込んでも大丈夫.
アウターは通気性重視でコーデュラナイロンとレザーを組み合わせてありますが,切り替え部のカッティングが優れているので縫目が足先の動きを妨げることもありませぬ.

なお,レースアップブーツをバイクで使う場合,走行中に紐がほどけると巻き込んで危険ですから,市販のコードロックiconを併用しておりました.昔のレーサーなどはシューレースの結び目をワイヤロックしておりましたね.

難点は,本来ライディング用に作られたものではないため,シフトペダルの当り部に補強革が無いことですが,これはペダル側をちょっと小細工しまして,傷がつかないようにしておりましたので無問題,こんなのはメーカー側がペダル先端部の形状を少しリデザインすりゃ何でもないことなのに,半世紀もそのままのカタチですな.これは些かメーカーさんも怠慢ではなかろうか.
一方ブーツ側も,あの爪先の補強革ってのは,使っているうちにそこから糸がほつれて来たりして痛し痒しですね.縫目のせいで水漏れの原因にもなりますし.

とまぁこのダナーのブーツで九州にも四国にも北海道にも行きましたが,実に履いていて快適でありました.凡そバイク旅行で不意の雨に見舞われ足が濡れるほど憂鬱な上に疲労が嵩むことはありませぬし,また蒸れるのも非常に厭なものですが,こいつを履いている限り,そういう懸念から解放されて靴の中はいつも晴れのちグゥなわけでしてな.
店頭で見掛けたら買える買えないは度外視して,是非手に取ってご覧頂きたいものであります.正しいデザインってのはかくあるべきでございますね.

ライディングブーツでこのぐらいの完成度があればそれは素晴らしいのでしょうが,生憎ワタシは今もそういうものを存じませぬ.尤も米軍が豊富な国費で贅沢に開発したものと,市井の靴屋が片手間に造ったようなモノとを比較するのは無理がありましょうね.

さて,と,ブーツの手入れも終え,ヘルメットのシールドも磨いた.旅行用具一式も点検した.これでいつでも出発準備O.K.

……なのですが,考えてみれば今のワタシにはVespa君しか居ないのであった.

Vespaで完全装備のロングツーリングというのも些か素っ頓狂ではありますなぁ.実際にやってみれば面白いのかも知れませぬが.

Point2倍 8日 AM9:59迄ダナー OLYMPIC(オリンピック) 8(26) ブラック(BK)

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もう今はブロックパターンのビブラム底しかないのか喃.

posted by 「い」 at 20:57 | Comment(3) | TrackBack(1) | デザイン
[この記事へのコメント]
  1. ブーツだけでなく、オートバイの乗車時の服装には、いつも頭を悩ませています。
    最新鋭のスーパーマシンにでも乗っておれば、それこそ最新のジャケットやブーツで武装すればよいのでしょうが、60年代の実用車ベースのスポーティー車両(CS92とセルペットスポーツ)と70年代の車両(CJ360)ですと、どうもそういった服装ではミスマッチ。かといって、昔風情のカッコでコスプレするのはこれまた滑稽です。結局答えは出ていませんで、ジーンズにブルゾン、冬は革ジャンといったところです。ブーツは、ハタチのころバイト代をはたいて買ったクシタニのブーツがあったのですが、その後大幅に増えた皮下脂肪とそれに伴う体重増で履けなくなり、友人に引き取られていきました。後ジッパーのつるんとしたシンプルな形のものでしたが、最近はプロテクタが仰々しくなったものが多くてその手のものが欲しくてもなかなか見当たりません。現在はガエルネのトラッパーという登山靴のようなカッコのブーツ(廃盤品)と、同社のタフギアというブーツを使っています。トラッパーのほうはCL400で北海道ツーリングに行くときに選んだもので、防水性や保温性、歩きやすさなどはおおむね良好でした。ややソールが厚く、最初のうちは操作性に違和感がありましたが、1日履いていましたら馴染みました。ただ、小さなオートバイですとペダル間隔が小さいため、もうちょっとスリムなものが欲しくなるのと、どちらかというとアウトドア風の服装でないとあわない感じがします。一方のタフギアは、輸入元の「ネーミング募集」に応募したところ、採用はされなかったものの「3名にプレゼント」の枠にはいったものです。こちらは軽い履き心地や履いたり脱いだりが楽なところがいいのですが、防水性は無いそうです。また、ちょっと今っぽい?デザインのため、旧車だと流石に浮くかなぁ、という気がします。それと、こちらもちょっと底が厚いですね。(最近ソールの薄いタイプが出たそうですが)

    Dannerのブーツはシンプルな形でよさそうなのですが、甲高幅広な典型的日本人足型のボクだと、ひょっとすると窮屈且つ形がくずれるのではないかという心配がありますね。ガエルネは日本人向けの型を使っているそうで、その分いいのかもしれません。
    Posted by 某店長あらため大豆大臣 at 2006年09月19日 19:46
  2. 何故に大豆大臣W バイオディーゼル車にでも手を出しましたか.

    >ガエルネは日本人向けの型を使っているそうで

    ああ,そういう問題はありそうですね.ワタシはむしろ日本人向け足型だと幅が広過ぎ甲が高すぎるので,輸入靴そのままで問題ないのですが…

    >タフギア

    これですな↓
    http://www.hobidas.com/blog/special02/archives/2005/11/post_6.html
    なるほど.ビブラムのブロック底ですか.あれはブロックの分だけ厚いですからねぇ.それでこういう風↓に改善された.と.
    http://www.hobidas.com/blog/special02/archives/2006/03/

    余談ですが,ブロック底ってのは,今となっては設計思想がいささか古く,泥濘地では泥が詰まるとグリップが急速に悪化する上にフラットな路面でのグリップもいまひとつ.ということで,今のノンスリップソールの技術ってのはブロックパターンでない方向へ進化しておりますね.GAERNE Trapper がどうなってたかは覚えてないのですが.

    つまりバイクや車のタイヤパターンの進化と傾向は同じで,昔の細かいブロックパターンと,今の大き目のグルーブとサイプ切ったパターンの違いのような感じです.
    ただ,日本市場ではイメージ先行と言いますか,“ビブラムといえばブロックソール”の印象が強く,変わらぬ人気があると見えます.

    個人的には,今のDannerのリブソールもいいのですが,それが擦り減って底を張り替える時が来たら,↓こいつを試してみたい気がします.
    http://www.nisshinrubber.com/hyperv/hyperv1.htm
    尤も,将来的に靴底単体で販売されるかどうかはわからないのですが.
    Posted by 「い」 at 2006年09月19日 22:34
  3. ノンスリップ靴底の研究分野と言うのも進歩著しく,「い」が新たに耳にしましたのは,山形大学大学院と民間各社による,「RB (Rice Bran) セラミックス」だそうでございます.
    【ソース・何れもweb魚拓】
    http://www.easyurl.jp/2ii
    http://www.easyurl.jp/2ij
    http://www.easyurl.jp/2ik

    米糠とフェノール樹脂との焼結セラミックスってのは何かコロンブスの卵と言うか,意表を突いた組み合わせでありますね.
    この素材は,自己潤滑性を持つ滑り軸受にも使うが,逆に微細化してゴムに練り込めばノンスリップ材として有効.と,見かけ上は対照的な用途があるという点が興味深い.

    してみるとこの素材,完全無潤滑型直動すべり軸受に使えるってことは,クラッチのスラストベアリングに使ったら良さそうだが如何か.
    こういう素材がちょこちょこ出て来るから材料工学ってのは面白いですなぁ.
    Posted by 「い」 at 2007年09月27日 20:40
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