2006年10月12日

チベットのモンテヴェルディ

前回は思わぬ横道に逸れて失礼致しました.さていよいよ本題の油蕎麦に入って行くわけでございますが,単に奇を衒った思い付き料理と思われては心外ですので,その文化人類学的背景について簡単に触れておきましょう.

そもソバという植物は中央アジアが原産でして,今は世界各国で栽培されておる.イタリア料理に詳しい方なら周知でしょうが,当然ながらイタリアにも蕎麦パスタは存在し,アルプス南麓あたりの郷土料理として親しまれており,日本でも輸入食材に強い食品店なぞに参りますとイタリア製の蕎麦パスタ-主に蕎麦タリアテッレやフィズィッリ-も売っておりますし,今は国産品もございますのでワタシも稀にお金があるときに限り食べております.

サンクゼール そばパスタ300gイタリア料理では蕎麦は内陸山岳地帯の郷土料理の部類ですし舌触りに粗さがありますから,乳製品をタップリ使ったクリームソースやポルチーニ茸などの山の幸,或いはイノシシやウサギやシカなぞのラグーと合わせて使うのがオーソドキシーかと存じますね.

一方,原産地に近いチベット地方ではどうかと申しますと,例えばブータンにはプッタという蕎麦が現存し,その調理法はS.A.O.P.とよく似ておる.

【外部参考リンク:幸せなブータンご飯


↑こちらによりますと製法は押出し麺ですからスパゲティと同類,茹でてから水洗いするところは日本の蕎麦と似ておりますが,熱した調味油で和えるところはS.A.O.P.と相似であります.チリパウダーを使うあたりは赤唐辛子を使うイタリアと手法は異なりますが食味は似たものになることが想像されます.具はブータンではハーブとタマゴなどのようですから,これもイタリアと料理の構造は同じと看做していいでしょう.

まぁ能書きばかり長くてもイケマセンので思い切って端折りますと,レヴィ-ストロースを引用するまでもなく,構造主義的な見方から言えば日本の蕎麦の食い方はむしろマージナルなものであって,油蕎麦,さらにそのアーキタイプとしては蕎麦クレープやパンケーキのような食い方の方が本流ではないか.という仮説が導き出せるわけでして,つまりは主体の蕎麦よりも,蕎麦と食材との構造的関係性を重視する視点であります.

さて,ではヨタ話はここまで.いざ実践.果してイタリアとチベットは蕎麦の世界軸を中心に邂逅出来るのか.

使う蕎麦は蕎麦粉100%の太切り.但しワタシの都合により生蕎麦を打ってる時間がないので市販の干蕎麦.用意するものは基本的にS.A.O.P.と同じで,追加する具は溶きタマゴ人数分1コ宛とワケギ.何故チベット地方ではタマゴを使うかと考えますに,卵白は当地で繁用される韃靼ソバを使った場合の苦味を被覆してまろやかにする効果があるからではなかろうか.喩えればゴーヤーチャンプルーにおけるタマゴの役割を想起して頂けばよろしいかと.

ハーブは差し当り手近にあったワケギでやってみますが,チャイブや野蒜なども良いかも知れませぬ.これは近似種が中央アジアにもイタリアにも広く分布する筈で,タマゴとも相性が宜しい.ハーブオムレツにも欠かせませんな.

ワタシが設定した作業手順は,
  1. 濃い目の塩湯で蕎麦をアル・デンティに茹で,水洗いしてザルに上げる.
  2. フライパンに発酵バターを入れて融かし,柔らかめのスクランブルエッグを作り,横に取り分けておく.スクランブルエッグの下味は蕎麦湯を入れて塩味とルチンを補完.
  3. そのフライパンでS.A.O.P.と同じ要領でオイルソースを作り,ソフリットしたニンニクは取り分けておく.
  4. ワケギは刻んでおく.
  5. 1. を電子レンジで温め,いったん熱湯で湯切りしてから,オイルソースの入っているフライパンを熱して一気に全部を和えたら火を止め,塩梅を整えて
出来上がり.ラディッシュの薄切りを飾ってブータン国旗のメタファに.

実験蕎麦1

では食うてみます.この場合は箸がいいのかフォークなのかハタマタ手掴みか迷うところですが.

むぅ……これは…

まず反省点(苦笑)
蕎麦粉100%の蕎麦は失敗であった.フライパンで再加熱するとツナギが保たずにプツプツ短く切れてしまいまする.やはり小麦粉,しかもグルテンの多い奴をツナギに使ったコシの強い蕎麦が向きましょう.それからラディッシュは彩りにはいいが食味の点で合わぬ.赤い色が欲しければドライトマトあたりにすべきであった.

成功点としましては,味そのものは悪くありませぬ.最も似ているものを挙げればカルボナーラでございますね.但し矢張りニンニクは少なめの方がいいようで,蕎麦の薫りが掻き消されてしまいます.ニンニクに換えて針生姜なども良からん.
辛味は問題無し.唐辛子を使わない場合は山椒の粉なども良いかも知れませぬな.

まぁ今回はいわゆる朝鮮語で言えば「実験を安全に成功裏に実行した」という段階に留まりましたが,再挑戦の際はより美味く食えるものが出来るであろうという甚だ楽観的なる展望を述べて,今回の実験報告を終わらせて頂きます.そう云やぁ平壌冷麺も蕎麦麺だったなぁ.今度はあれを使ってみるか.

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モンテヴェルディは,このサヴァールが振った奴がいちばんワタシの気に入ってるのですが,如何なもんでしょうかな.一曲目からいきなりキラビヤカに始まりますが,宗教音楽がこんなに華麗でいいものだろうか.イタリアってところはルネサンスの昔からこんな風に派手々々なのか.と思ったりも致します.





これはスゴイですよ.頭ぶっトビます.音が戸外に漏れると近所の人に狂人と思われること請け合い.ダイナミックレンジが大き過ぎて最初聴いたときはスピーカーが壊れるかと思いました.しかしどことなくモンテヴェルディと通底するようなものを感じるんですがこれはワタシの耳の迷いでしょうかね.




posted by 「い」 at 14:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 呑み喰い
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