2006年10月28日

典座教訓

「喫茶養生記」を著した榮西和尚に続いて,道元禅師が著した「典座教訓」にまつわる哲学的なお話…ではありませぬ.シイタケのお話を致します.

なぜ薮から棒にシイタケかと申しますと,その「典座教訓」の中にシイタケが出て来るからであります.
かいつまんで申しますと13世紀,若き日の道元禅師が中国に留学された折のこと,寧波港の船上で入国許可を待っておりますと,曰くありげな老僧が船を訪ねて来,「椎茸は無いか」と問うた.
シュールな問いかけですが,これは禅問答を仕掛けているのではありませんで,素でシイタケを買いに来たのです.

この中国の老僧の言うらく,シイタケのダシで麺のスープを作りたし.と.
つまり僧侶ですから当然精進料理なので,中華麺と申してもトリガラスープなんてのは使えないわけですな.たぶんシイタケとコンブでスープをとるのでありましょう.
しかし既に13世紀には日本の椎茸がウマイということが中国にも知られていて,しかもその頃から窩麺(汁麺)が普通に食べられていたというのは珍らかな話です.日本でラーメンが普及するのはその750年後ですからな.

余談ながら,このときの老僧との問答で,未だ若き俊英だった道元禅師は軽くあしらわれてしまうのですが,ワタシはこの問答を「妖精をみるには,妖精の目がいる」と解釈しております.つまりどういうことなのかは哲学的過ぎてここで触れるには適当でありませんから関心のある向きは原典をご覧頂きたい.

ところで皆様は,ここ伊豆がシイタケ栽培発祥の地であると云う説をご存知でしょうか.事の真偽は審らかではありませぬが,現在の伊豆に於いてもシイタケ栽培は甚だ盛んにて,非常に美味いシイタケを産することに間違いはありませぬし,隣町の修善寺には「きのこ総合センター」などという(一体誰が観に来るのやら判じ難い) 県の施設さえございます.農家だけでなく近所でも普通にシイタケ菌を植えた原木が売られておって,原木ごと買って来て裏庭の隅に立てかけておき,生えると摘んで日頃の菜に供しておる方々も多い.

拙宅は貧窮者向けの団地なれば庭はありませぬが,折しも良い椎茸の出る季節ですから,最寄りの「萩原しいたけ農園」に寄って採れたてホヤホヤを買い求めて参りました.

とりたてしいたけ
採取後15分のシイタケ.ここんちのシイタケ,農林水産大臣賞なんて取ってたんだなぁ.知らなかった.イノシシと鹿肉もあるという貼紙もしてありました.そういえば秋はジビエの季節でもありますな.

シイタケサラダ
農園のオジサンが「ウチのシイタケは生でも食える」と申しますので,早速ケイパーとニンニク,ビネガー,オリーヴオイルで和えて食ってみました.つまりイタリアに於ける生ポルチーニのサラダと同じ要領でして,新鮮なうちでないと試せない食い方ですな.これはフンワリとした食感で中々美味い.ちなみに塩は杯一杯の水で溶いて適宜スプーンで掛けると味の馴染がいいですぞ.

冷川の露店
ついでに近くの露店にも寄って色々と安いものを物色するわけである.

さてもポルチーニといえばイタリアでは大変に珍重される由,乾燥物や油漬が日本にも輸入されて篦棒な高価にて売られておりますが,どうやらあれは日本にも生える「ヤマドリダケ」であるらしく,曖昧な記憶を手繰れば近在の山でも見たような気がする.何故みな無視しておるのだろう.いやしかしポルチーニは人工栽培が出来なかった筈ゆえ,あまり注目されて乱獲となっても困りますが.

それにひきかえ,伊豆の山にはマツタケというのは全く産しないようでして,まぁ赤松林があまり無いので当然と言えば当然ですがワタシも子供の頃から地元で食った記憶が全く無い.今は既に北朝鮮経済制裁が発動しておりますから安い朝鮮産はもう来ませんし,国産は随分以前からワタシの買えぬ値段になって久しぅございますから,これからも食う機会はさらに稀になりましょう.なぁにあんなもの,香りを珍重するのは日本人と韓国人ぐらいのもので,他の国では臭いと言って嫌われ雑茸扱いですし,ワタシはちっとも惜しくはありませぬよ? えぇ惜しくなんかありませんとも.

…負け惜しみはさて措きつ,以前某所でイタリアンレストランを経営する某氏に聞いたところですと,イタリア人はおしなべてキノコ類が大好きであるが,未だシイタケはさほど普及しておらない.しかし試食に供したところでは姿形も風味も総じて好評であったので,もしや将来はイタリアに於いてもシイタケ栽培や輸入が盛んになるかも知れぬ.とのことでした.

試みにぐぐってみますとフィンランドではシイタケ栽培が割に盛んなようで,酷寒のフィンランドで作れるならイタリアでもさして栽培に困難は無からん.折からのスローフードブームの追風に乗り,天然キノコ資源が先細り気味なイタリアでもシイタケが持て囃される日が来るのかも知れませぬな.

シイタケソテー
イタリアの一般的なキノコ調理法でシイタケを食う試み二弾目.ということでオリーヴオイルを敷いたフライパンでソテー.染み出たエキスにアンチョビソースとバタ少々を和え,塩・胡椒して回し掛け,仕上に粉チーズを振ったもの.ごく自然な美味さであります.シイタケ農園のオジサンによれば,あまり火を通しすぎない方が美味いとのことですので,そのような火加減に致しました.これも自然に美味ぅございます.

ふと今思い付いたのですが,道元禅師トリビュートということで「精進シイタケラーメン」というのはどうであろうか.中世日本に存在した(であろう)精進の食材で現代の醤油ラーメンを模すというタイムスリップ遊び料理.次回はこれを作ってみることに致しましょう.

【関連エントリ精進ラーメン その1

posted by 「い」 at 20:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 呑み喰い
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