2006年12月22日

ソーセージ

「い」の住む街の隣に,熱海という在がございます.してその山奥に,「グリム」というソーセージ屋がある.まぁ山奥と申しましても街道沿いなのですが,周りには森しか見えぬ寂しいところであります.何故そのようなところに忽然と独逸の田舎にあるようなハーフティンバー風の建物のソーセージ屋があるのか事情は詳らかではありませぬが,ここのソーセージやハムは少々値は張っても相応に旨いのでして,ウチでは通る序でがあると立ち寄って買ってくる習いなのでございます.

折しも御歳暮の季節なれば,噂に聞くハムの人とやらがここのハムを持って来てくれれば幸せなのですが,かつては栄耀栄華を極めた「い」もひとたび落ち目になれば去る者日々に疎しで,債鬼は入れ替わり立ち替わり来たれども,御歳暮なぞはここ数年匂いも嗅いだことがございませぬ.

さて詰らぬボヤキはともかく,買うといつも袋に入れてくれるチラシには,“99,00年 ドイツSUFFA食肉加工コンテストにて金・銀・銅メダル受賞” と書いてあるのですが,そのSUFFA食肉加工コンテストという催しにどの程度の権威があるのかワタシは存じませぬので馬の耳に念仏.つまるところここの主人は独逸で修行した本格の人らしい.しかし結局は旨けりゃぁ能書きはどうでもよろしいのでありまして,先日も家人がその道を通ると言うので,少し無理して幾つか安目の奴を買って来させました.

グリムのソーセージ


この「グリム」,先にも申した通り,界隈に瀟洒な別荘地があるでもなく,またこのあたりは濛気たなびく山中なれば夏は霧深く冬は寒いところで,果してこれで商売が立ち行くのか心配になるくらいの立地なのですが,仕事が良ければ客は来るらしく,潰れる気配はまだありませぬ.

また,ここほど寂しいところではありませぬが,10kmあまり離れた別の山中には「ベケライ・ダンケ」という本格のドイツパンの店がございまして,そこも周りが殺風景なところに似たようなハーフティンバー風の建物が建っておってパンを焼いて売っておる.ライ麦パンが旨いので時々立ち寄るのですが,やはりこれも随分と不便である.いったい独逸の食い物ってのは繁華な場所で作り売りすると何か不都合な事情でもあるのでしょうかのぅ.

「グリム」のソーセージは意外にも代理店を介してネットでも買える模様.実は隠れた有名店だったりするのだろうか.


しかし独逸人ってのは総じて巨漢が多いように思うのですが,図体の割には食っているものが酷く貧相な気がしますな.詳しくは存じませぬが,カルテスエッセン -すなわち「冷食」- と申しましたか,これは「冷蔵庫から出して来ただけのハムとかソーセージを切ってパンとチーズを添えて出す」みたいな簡素を通り過ぎて索漠たる食事の謂だそうで,下手すりゃ1日に2食はそのカルテスエッセンでも一向に苦しからず.というのが彼の地の習慣だと申しますが,ちょっとそういう感覚には追いていけませんなぁ.
仮に「冷たい食事など人間の喰うものではない」と厳格に信じてやまぬ中国人の男と,カルテスエッセンが当り前な環境に育った可憐素朴な金髪碧眼紅頬の独逸娘が結婚したらどのようなことになるか,想像するだに恐ろしいことであります.愛さえあれば富める時も貧しき時も.という問題ではないように思えるのですがどうなのか.

さてもこういう丁寧な手作りのソーセージは,単に茹でて食うのが一番本格で旨いのかも知れませぬし,チラシにもそう書いてあるのですが,パンとソーセージだけでは如何せん腹持ちが悪いので,例によってパスタにしてしまいました.すいませんね野暮なイタリアの山出しの田舎者ノリで.

ソーセージのホワイトソースパスタ
スパゲティ コン サルシッチァ ヱ カヴォーロ.何も気取って原語で言わずとも宜しい.要はソーセージとキャベツ.
ガーリックオイルで炒めたキャベツにブイヨンとホワイトソースに牛乳を注ぎ,ソーセージを入れてちょいと煮ただけのものでございます.料理と言うにも恥ずかしい.がしかし,カルテスエッセンよりはマシであるとお思いになりませんか.

余談ですが,てか,このままもぐもぐパスタ食いつつ余談のまま終わる魂胆なのですが,また聞きの話ですと,今や独逸本国でのハム,ソーセージは品質も味も低落することヒトカタでなく,独逸から出てイタリアを回る手軽なバスツアーなどでは,独逸のオバチャンたちがサーヴィスエリアに停まる毎に,割に安くてそこそこ美味いイタリアのハム・ソーセージを買い溜めて帰る由.何やら沼津で干物を買い漁って帰る観光バスツアーのオバチャンたちのようですが彼の地ではそんな生易しいものではないらしい.

目撃者に拠ると,イタリアのアウトストラーダのサーヴィスエリアにヤオラ進入した独逸ナンバーの観光バスの扉が開くや否や,猛牛のように偉大な体格のゲルマンオバチャンが大挙してどどどーと土産物屋のハム・ソーセージ売店に殺到する様は,将にゲルマン民族の大襲来,アッティラ大王の率いるフン族がドナウ河を打ち渡りアルプス越えて,西ローマ帝国に怒濤の侵攻を敢行した故事を彷彿せしめずにはおかない.との事ですが,話の真偽はワタシも存じませぬ.
posted by 「い」 at 01:00 | Comment(7) | TrackBack(0) | 呑み喰い
[この記事へのコメント]
  1. いつも思うのですが「い」さんのパスタの絵はお皿にめいいっぱいなのですよね。
    美味しそうに見えるのですよ。実際に美味しいのは存じているつもりですが(笑)
    量の多少だけで料理の美味しさを判断するあきれた知人がおりましたが、目からの刺激も確かに美味しさには影響しておりまする。
    撮影に際しいろいろ気遣いは(料理を食うに困らない程度でしょうが)されておるかとは思うのですが、盛りつけっぷりがきれいなんですよね。
    盛りつける時のコツなどはありましょうか。
    どうしても平皿では「い」さんのようにこんもりとめいいっぱい盛りつけできないのですよ。
    とはいえ、コツをうがかったとしても身体の調子に因りてんこ盛りパスタは食べられないのですが、二人分(三人分か?)盛りつけるには応用できるかな。
    では。
    Posted by "ね" at 2006年12月23日 22:31
  2. >量の多少だけで料理の美味しさを判断するあきれた知人

    ははは.ワタシはきっとそのお友達と仲間ですね.
    ワタシの場合,「いくら美味くても量が少なければ意味が無い」というポリシーがありまして,景気よくどどっどーんと大盛でないと納得できませぬw 半ば冗談で半ばマジ.
    ちなみに撮影時の演出は何もしておりませんで,いつも喰う直前そのまんまをスナップしただけでありまして,もっと撮影に凝りたいのは山々なれど冷めてしまっては本末転倒.
    さても最近は悪い流行で,ヌーベル・キュイジーヌだかヌオーヴァ・クッチーナだか存知ませんが,外食に出てデカい皿にちょこんとパスタを盛付けたのが出ると,ゲッソリしてしまいますな.たぶん懐石料理の悪い影響ならん.

    あれをやられてしまうと,見栄えは良いかも知れぬが,いくら皿が暖めてあっても表面積が大きくなって冷め易い.形状が球体に近づくほど容積最大にして表面積最小となり,エネルギーロスが少ないというのはBuckminster Fuller の論文を読むまでもなく物理的定理でございますが,同じ量なら深めで小さめの皿に大盛の方が,大皿に浅く広げて盛り付けるより,最後まで温かく美味しく食べられるのではなかろうかと考えております.
    もっともそうすると,フォークでパスタを巻くのが難しく,スプーン必須になってしまいますが.

    ちなみに,次回の「ブックマーク -8」で取り上げるつもりですが,ワタシの尊敬するデザイナー:秋岡 芳夫氏が晩年に提案していたのは,数人分のパスタなぞをシェア前提でサーヴするときには,あえて和食器で,分厚い無地の黄瀬戸(今でも雑器扱いで廉価)なぞを使うとイイ.というアイディアがありまして,ワタシも真似することがしばしばありますが,これはウンブリア州あたりのテラコッタを彷彿とさせる風合が妙にアートっぽく,その上に保温実用性も優れております.
    そちらのお住まいは瀬戸や志野,美濃焼の産地も近ぅございましょう,さすれば各所には頻繁に陶器祭が催されておると存じますので,何かの序でなどに足を運ばれ,見切品などの中から物色されるのも一興と存じます.
    Posted by 「い」 at 2006年12月24日 03:40
  3. >「い」様,「ね」様
    横から失礼いたしますm(__)m。

    ワタシも量が必要な人間です(笑)。外食でしたらお値段も1,000円以内がいいです(爆笑)。

    無闇と盛りがよく見ただけでゲッソリってのもイヤですけど...そぉですねぇ...日本蕎麦でいいますと、美味しいモンだから一気に手繰り終わり、「あぁちくしょー美味いモンってのはどぉしてこー少ないかなぁ...すんません、お茶下さい(^^)/」っつって貰ったお茶を啜ってると満腹中枢が遅れて反応し...結構な盛りだったコトに気づき...ゲップの一つもしながら席を立とうかという...そのくらいの量は欲しいです。

    ま。効能書きの割に量が少なくって出てくるのが遅い上に内装が「みんげいふう」且つ座席数の割に厨房内の人数が少ない...なんて店だと何故だか二度と行きたくなくなる場合が殆どでございますねぇ。
    Posted by 1sugi at 2006年12月27日 21:57
  4. 何気なく,一般の店での一人前のパスタはどのくらいか調べてみましたらば,だいたい乾麺の状態で100gのようです.あちゃー,道理で少なく感じるわけですわ.

    ワタシの場合,DE CECCOの500g袋をおよそ2.5〜3回で使い切るので,倍近く喰ってる勘定になりますな.いや実はその,「撮影時の演出は何もしておりませんで」と書きましたが,舞台裏を明かせば,作ったはいいが皿に入り切らずに,写真のフレームからはみ出た横にはフライパンがあってそこにまだドッサリ.というケースも多々あるのでした.もちろん残さず食べております.

    蕎麦はというと,生蕎麦は180gあたり,干蕎麦は120gあたりが一人前らしく,ワタシの適量はその1.5倍くらいと思われますが,最近のケシカラン店では,どう見ても100g程度しか無いのではないかと思えるようなケースも散見されますな.ISO規格で「蕎麦一人前は180g」と厳正に制定し,それ以外は蕎麦と名乗ってはナラヌ.として貰いたいものです.いやマジで.
    Posted by 「い」 at 2006年12月28日 10:48
  5. > そちらのお住まいは瀬戸や志野,美濃焼の産地も近ぅございましょう,

    わりと近所にノリタケの工場がありましてね。洋食器(磁器)の方がなじみがあるのですよね。かといって感覚が育ってるわけではないのですが。
    ノリタケの森なんて洒落たもんが出来る前は倉庫の片隅で半端もんを激安で手に入れたもんですよ。両親はいまだに観光客相手の売り場でお得なものを見付けてくるようですが。
    陶器の方は前の職場の上司が瀬戸の住まいで、結婚祝いに可愛らしい陶器をひと揃えいただきましたが、つちもの故使うのに躊躇しておりまする。

    > 一般の店での一人前のパスタはどのくらいか調べてみましたらば,だいたい乾麺の状態で100gのようです.

    食品交換表第6版(日本糖尿病学会編)によりますると、1単位(80kcal)のスパゲティ(干し)は20gです。100gですと5単位になりますので、表1(穀類)が過多になりますなぁ。気持ち的にはこの程度(いやもっとですが)食べないと気が済まないのですが60g程度(3単位)で我慢しておりまする。とうぜん家族3人分まとめて盛りつけないと視覚的にがっくり来ますね。
    そば(ゆで)は60gが1単位になりますので、180gは3単位のなりほぼ適量ですな。しかし乾めんですと同じく20gですのでこれも寂しい。
    そいや新そばを食べ損ねておりました。
    Posted by "ね" at 2007年01月02日 18:21
  6. ソーセージと言えば、御殿場の二の岡ハムの「ボロニアソーセージ」もたいへん美味しいですよ(^^)
    果たしてそれが「ボロニアソーセージ」として正しいものなのかどうか私にはわかりませんが、美味しいことは間違いないです。
    Posted by るく at 2007年01月06日 15:47
  7. >「ボロニアソーセージ」として正しいものなのか

    いやぁそちらさまが解らぬのなら,きっとワタシはもっと解らぬと存じます(笑).今度近くに行く事があったら買ってみよう二の岡ハム.
    しかし改めて考えるに,正しいボロニアソーセージとは,一体如何なるものならんか.
    製法を考えると,細かく挽いた挽肉に砕いたラードの砕片を入れて蒸す.ということのようですので,ソーセージの類と言うより肉で作るカマボコみたいなククリになるのでしょうかな.

    そもそもボロニアソーセージという名前も英語ですからワタシには正体がよく解らぬのでして,たぶんイタリア語はモルタデッラではないかと見当をつけて調べてみると,ボローニァには確かにそれらしいものが地産認定品目(IGP)-モルタデッラ・ボローニァとして存在するようでございまして,見た目は非常にボロニアソーセージであります.
    http://www.mortadellabologna.com/
    これが「正しい」んですかねぇ.まぁボローニァ産なのだからこれ以上ボローニァなモノはないでしょうが.

    しかし,例えば魚肉で同じ製法をやったら珍味だったりしないだろうか.どこかの水産会社が魚肉ボロニアソーセージやらんかな.などと考えながら今まさに三流メーカーのぁゃιぃボロニアソーセージをつまみに焼酎を飲っている次第.
    はぁ,ボローニァには海は無い…ですか.まぁ固いことを言わず.
    Posted by 「い」 at 2007年01月07日 00:37
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