2007年08月06日

シシリアン・ルージュ

今回こそは夏に相応しい美味の話を致します.

諸兄は,「い」がずっと以前に書きました「長野の丸ナス」の話を御記憶でしょうか.
まぁワタシ自身が忘れてたぐらいですから皆様が御記憶なワキャありませぬゆえ,後でリンク先を御覧願わしぅ存じますが,あのナスとトマトのパスタの件では,絶品ナスには筆を及ぼしたものの,トマトの方は等閑視しておった.これは言うまでもなく片手落ちなれど,美味いナスの入手困難もさりながら,トマトソース用の美味い完熟生トマトの入手というのも同様に至難にて,ワタシも普段は缶詰のイタリア産トマトの特売88円でお茶を濁しておるのが現状であります.

然るに最近のニュースによれば,イタリア本国でも中国野菜の魔の手がトマト市場を蚕食しつつあるらしい.こうなると味がハミガキだろうが何だろうが生産性や価格で中国産に打ち勝つことは難しかろう.さらに今年は南欧が記録的猛暑と言うことで,夏が暑い年のトマトは収量は減るが糖度が高くなり,きっと来年のトマト缶は非常に美味いのではないか…などとノンキなことを考えておる場合ではない.危ういかなイタリアトマト缶,88円で買えるのも今のうちかも知れぬ.そうなったらどうしよう.

何,「完熟トマト如き,庭先でも作れるであろう」とな?
いやいや,そう簡単には行かぬ.何となれば,言うまでもなくトマトソースというのは,サンマルツァーノ,或いはロマーノ,また或いはその交配種を用いるが定番でありますが,これを日本の露地で育てますと,梅雨が鬼門である.つまり夏期に乾燥しがちな気候の地中海地方と違い,本邦は夏が多湿なゆえに病気になり易いのでありますね.ズッキーニなども梅雨越しで駄目にしてしまうことが間々ありますが,更に微妙なのである.

とは言え,ここ伊豆地方は土の水はけ宜しく日照時間も長ぅございますれば,良いトマトの名産地でありまして,例えば北部の函南丘陵などは以前,car MAGAZINE か何かに「日本のトスカーナ」と言わしめた好適地,ってあれは風景が似て居るというだけか.或いは昔,カゴメ・トマトジュースのCMで,百姓の婆さんが「ただよし〜.野菜を摂らにゃダメじゃにゃぁか〜」とトスカーナ訛りの日本語で呼掛けておったのも伊豆の丘陵.ともかくここで採れるフルーツトマトなぞは,ワタシも高価にして滅多に口に出来ませぬが,何れにせよ非常に高級にして美味であります.

但しそれら名品も元来は生食用であって,なかなか加熱調理用トマトの良いものが寡ないことは変わらぬ.これが我が長年の懸案となっていたわけですが,そこへ熟れ過ぎたトマト色の Alfa Romeo 145 で飄然と現れたのは近所で園芸業を営む我が同級生.手に持つは何やら見慣れぬトマト.

シシリアン・ルージュ
大きさや形状からして一見ナツメ類のようだがトマトである.

この正体はと申さば,「シシリアンルージュ」というトマトらしい.新しい品種であるので件の友人が自らの畑で試作してみたという次第.してその試食がワタシのところまで回って来たというわけで,無論タダである.

リンク先の紹介文を読めば,何だか良い事尽くめで却ってウソ臭くさえ感じてしまいますが,試みに値段を調べてみれば,思わずノケゾるような値段でありまして,2kg で3.3K円と言えば1コで50円近いではないか.フルーツトマトと同じくらい高くねぇか.すげぇなぁ.

というわけで,今回は味を検証する意味合から,あれこれ混ぜずにこのトマト一発とバジリコの粉だけで食ってみます.
トマトパスタ

なるほどこれは美味い.コクがあって癖になる.と言って味に癖があるではない.確かにデータ通りグルタミン酸分が多いと申しますか,旨味が非常に濃いですな.単純にガーリックとオイル,鷹の爪で炒め煮しただけで味が良く出てまとまり易い.つまりは使い易いということである.更なる旨味成分相乗効果を狙うなら,隠し味にアンチョビソースの煮詰めなどのイノシン酸分を加えれば良からん.

やれやれ.またウマイものを知ってしまった.
あゝ,我が住まいの近所には耕す人がおらずに放っぽらかしになっておる風通しの良さげな里山の畑が一杯あるが,そのあたりにザーっとこいつを植えて取り放題…なんてことが出来ぬものかのぅ.…と,却って憂いを深めた夏の昼下がりでありました.

【関連エントリ】
メランツァーニ

posted by 「い」 at 21:10 | Comment(2) | TrackBack(1) | 呑み喰い
[この記事へのコメント]
  1. こんにちは。
    トラックバックを送っていただきました。
    サイトをごらんいただき、ありがとうございます。

    シシリアンルージュ、栽培はしやすいそうです。
    とはいうものの、「加熱調理用トマト」と言うと、
    農家は「売れないのでは」となかなか手がでない由。
    それで、私も一口食べて以来、ずーっと憂いを深めっぱなしです。

    寝ている畑があるならば、これを食べたい人に
    ど〜んと貸してもらえたらいいですね。
    Posted by 齋藤訓之 at 2007年08月08日 20:24
  2. これはこれはコメントまで頂きまして恐縮です.

    こいつを持って来てくれた友人によれば確かに栽培は簡単にて,同時期に植えたサンマルツァーノが今年の長梅雨で軒並みダウンした中,シシリアンルージュは総じて手が掛らず現在も収穫順調.との由.

    その後,地元の高級 (?) スーパーを偵察しましたところ,ごく少量は店頭に出ておるようですが,やはり甚だ高価,小さな1パックで280円では『パスタとシシリアンルージュの量を同じ位』というような豪奢は,我が貧乏所帯では未だ時期尚早のようであります.

    なお,後日に試行しましたのは,これをば一旦洗ってヘタを取り,丸ごと冷凍保存しておき,調理前に室温で解凍しますと,湯剥きせずに指でしごくだけで容易く皮が取れることに気付いてございます.この方法ですと,ホンの一煮立ちさせて味付だけでフレッシュトマトソースが出来てしまうというレトルトより早い電光石火,しかも冷凍ですから日保ちもさせ易いというわけでして,これで真冬でも旬の完熟トマトが思うさま食える

    …とは思えども,肝心の入手が心許無いのでありましたトホホ.
    Posted by 「い」 at 2007年08月09日 15:38
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シシリアンルージュ――生でよし加熱でよし
Excerpt: 小ぶりの中玉「シシリアンルージュ」  調理用の中玉トマト「...
Weblog: 食べ物記者 齋藤訓之 SAITO Satoshi
Tracked: 2007-08-08 20:24