2007年12月11日

余さずAMALIE

皆様既にお忘れの事とは思いますが,以前に書いたエントリ「Vespa のオイルを 250円/L の SUMIX から値段は7倍だがタダで貰った AMALIE に変えてみる試み (表題適当) 」
の結果編を書き留めておきます.

月日が経つのは早いもので,この駄文を書き連ねておる現時点でメデタク1qt ボトルを余さず使い切ってございます.その間,Vespa も慣れぬ高級オイルで腹を壊すこともなく,テストは問題なく終了致しました.
…ただ普段通りに乗っていただけとも言うが.

それでも一応はテストですから,条件を出来るだけ等しくするため,オイルを変えると一緒にプラグも新品 (但し品番は電極突出し型のグリーンプラグ: BPR7EY) に交換致しました.テスト時期が夏から冬に跨りましたので,気温や湿度条件の偏りは丸められておりましょう.

他の条件の違いはと云うと,混合比を少し変えておりまして,標準指定が2%のところ,1.7% (60:1) で使用.これは初めの給油数回分は標準通りで使っていたのですが,あるとき偶然に手持オイルが少しだけ足らなくなって60:1にした折,指定混合比より吹けが良かったので,何となくそのまま継続致しました.あまり薄いとコンロッド小端ベアリングあたりに厳しいが,この程度なら支障も違いも無からん.

さてそれではヘッドを開けますぞー.燃焼室は如何なっておるでしょうかワク々々.

AMALIE を使った時のヘッド…ほう.これは非常に奇麗.ちなみに以前のSUMIX を使った時のヘッド写真はこちら.SUMIX も悪くはなかったが,AMALIE はさらに清浄性が高いと見えます.

昔の2st. 燃焼室の汚れっぷりからすると隔世の感がありますなぁ.昔のエンヂンは今と較べて燃焼室形状の詰めが甘く,あちこちに混合気がワダカマリ,なかなか奇麗に燃えて呉れぬため,燃え残りのオイルが頑固なカーボンと化したり,逆に燃え切り過ぎた灰分が付着したりしてムラ汚れになっておるのが通例だったのですが.

ここではデポジットの量は SUMIX より一見して顕かに少なく,かなり軟質で,掃除も殆どスクレーパーを使うことなく,パーツクリーナを吹いてブラシで軽く掻き落すだけで奇麗になりました.
これだけデポジットが少量で軟質ということは,さぞトップリングのスティックは起りにくくかろう.一方,金属色の見えているところはキッチリとオイルが回っておりましてツルツル,潤滑性と清浄性は相反するものらしいですが,良いバランスで設計されておるように思います.

肝心の走行状態ですが,始動直後の煙は SUMIX より やや少ないか同等.暖機完了後には定速走行と急加速中とも事実上無煙.臭いは有り触れた鉱油的であります.普通の人なら全く気にならぬ範疇の臭さでありましょう.

# ワタシは昔から2st.車に多く乗っておる癖に煙が嫌いでして,と申すのは,臭くて汚れるのもさることながら.昔の価値観では,煙を多く吐くということは,カブらせておる|無駄なスロットル開閉|普段の運転がトロい所為でケース内にオイルが溜っておる…などを意味し,自分のヘタクソを晒すに等しい超ダサい乗り方だったからであります.
近昔でも,油煙油臭を嫌うあまり本末転倒して TZR250 (1KT) のオイルポンプを物凄く絞り過ぎ,高架道路で焼付いて進退窮まったことがあるくらいでして,後で計算したらば.殆どオイルが供給されてない状態になっており,それでも70km ぐらいは普通に走ったよなぁ.エンヂンとは意外と丈夫なものである.…って何をバカやってたんだろうね俺ぁ…


閑話休題,トップスローはメーターの針2本分ぐらい下がりまして有意差が出ました.この位の低速域ですと速度計誤差が大きくなりますので数値不正確なれど大要15〜17km/h あたり.そこからの再加速もノッキングは少なくスムーズでして,負荷を掛けた時のミスファイアは少ない模様.回して行った時の中・高回転域もスムーズではありますが,それは主観的な印象評価ですから書かぬ.こういう事はあくまでも客観的でないと不可ませぬからな.

さてここで改めて,使用した AMALIE Pro Two-Cycle TC-W3 RL の公称スペックを示します.テスト前に仕様を知っておると,予断が紛れ込んだり,意識してオイル特性に合わせた運転をしてしまいますので,敢て調べずにおいたわけでして.

動粘度:40℃-42.80 100℃-7.20 mm2/s
引火点:190.00℃
流動点:-39.00℃
粘度指数:135.00

…となっておりまして,粘度指数はかなり優秀.引火点がロードユースにしては随分と高いのが特徴でしょうか.SUMIX は70℃位なので大差がございます.ちなみに40℃での動粘度はかなり柔らかく,各メーカーの純正指定油が50後半〜60中盤 mm2/s あたりである事を考えると些か懸け離れておりますので,分離給油のバイクに使った場合,オイル吐出量が増え過ぎないか気になりますが,ウチの Vespa は混合なので実際はどうか解らぬ.

ちなみに AMALIE に近似な粘度のオイルはと申しますと,Castrol Active 2T (引火点は104℃で可成り低い) あたりが該当致します.あのオイルは分離給油で使った際にマフラーエンドが汚れ易いという風聞がありますが,それも粘度に起因するオイル供給過多なのかどうか,確たる事は言えぬ.そもそもオイルポンプの構造から言って,定常回転状態での吐出量は粘度と関係ないわけで,スロットル開直後|閉直後の吐出過度特性が変わるだけである.

とは言え,この「だけ」が曲者でして,スロットルワークのヘタな未熟者が分離給油で粘度の低いオイルを使うと,ベトベトのタールだらけにしてしまいがちなことは事実.仕様表を見ますと,Castrol のロード用は Active 2T に限らず総じて粘度設定が低く,使いこなしに一工夫が要るのもそれが主因か.推測ですが分離給油で使った時の AMALIE も似た傾向を示すかも知れませぬな.

# 粘度と云えば不思議なのは,同じ AMALIE に Synplus 2T という製品があるのですが,これは40℃での動粘度は42mm2/s と殆ど同じであるのに,一方また別の AMALIE 製品で 2T Motorcycle と云うのは103mm2/s となっておって甚だ違いが大きい.製品相互の用途は大きな違いがあるとは思えぬが,粘度がこれだけ違うのは製造ポリシーとしてどう解釈すべきか,首を捻るところであります.

そも一般論を申せば,現代スポーツバイクの2st.エンジンは,Vespa と同級排気量なら,大概は6割増しのピストンスピード,2倍以上の出力,半分近いピストンクリアランス,液冷による低目で安定したシリンダ内壁温度の環境下,出力空燃比よりやや濃いところで燃焼させておるわけで,そういう条件を許容するこのオイルが,方や低回転低出力大クリアランス強制空冷超リッチバーン実用車の Vespa に相性ピッタリだったら,寧ろ潤滑工学的に変であります.然るに特に問題も無かったということはつまり,AMALIE がオールラウンドに優れているということの証左であると言えなくもない.

各論では,ウチの混合仕様古物 Vespa を若年性ボケ中年のワタシがチンタラ走らせる限りでは,AMALIE はいささか性能過剰の気味はあるものの,かと云ってオイル性能過剰に伴うマイナス面,…例えば燃え残りのオイルがタール分となって固着や飛散するとか,マフラーのテールエンド汚損など…は見られませんでしたので,コストさえ許容出来れば優等の評価が付けられる.という結果になりました.

一歩考察を進めて,このオイルが最も向きそうな車種を推測するに,旧車に使うのに安心感のある鉱油系ということもあり,空冷混合の設計の旧いエンヂンで,しかも高回転高負荷を常用するタイプのスポーツバイク ー 例えば YDS-1 とか空冷 RM や YZ などの系列あたり ー が良いのではなかろうか. (YDS-1のストロークは TZR250 (3XV , 1KT) と同じですので,同じ回転数で回せばピストンスピードも同じですから,製造年代を考えると運転条件は可成り厳しいのである) また,分離給油で使ったときの吐出量増大については判断出来ぬので保留致します.

…とは言え,オイル各々の品質に雲泥の差があった昔の話でもあるまいに,同グレード JASO-FC 規格品相互の性能が著しく違うようでは,工業製品として困ると云えば全くその通りなのでありますが.

# 余談の些事だが何で PIAGGIO はヘッドナットの締付にスプリングワッシャを使うのか.只でさえヘッドガスケット無しでトルク管理を厳密にせにゃならんのに,これでは幾ら合口面を奇麗にしても甲斐無し…ってことでスプリングワッシャを廃しヘッドナットと平ワッシャを焼入品に交換,ウェットトルクでの弾性域角度法締結に改めたり.

然るに幾ら AMALIE が優れていることは判明したと雖も,その幸せに安住することを許さぬのは我が懐具合.これほど良くなくとも構わぬからもっと安い奴はないのか.というわけで,次は400円/L 足らずで FD 規格という Pitt Penn を試してみたいのですが,最寄りのピットペン販売店は大船のコーナンまで行かねばならぬ模様.そのために往復140km を Vespa で走るのも無駄々々しい.

Mechadock FDそこで某所の友人が丹波のコーナンから遙々持って来てくれたのがコレ.
「メカドック FD」398円.メーカーは大阪の株式会社櫻製油所で,たぶん中身は「サクラスーパーマチック FD」ならんか.すなわち「ピットペン FD」と堂々並び立つ安物 FD 規格オイルの双璧であります.今度は此奴を1本終わるまで使い,再びヘッドを開けて確かめん.


【関連エントリ】
油臭い話
油臭い話 -補遺
余りの AMALIE
Vespa君覚書

posted by 「い」 at 16:11 | Comment(5) | TrackBack(1) | 輪,輜,車
[この記事へのコメント]
  1. 実は私もスクータを2台管理しております。
    (音叉印82ccと可美村製101cc、可美村の1台は家族の所有品ですが。)

    愛用オイルはカストロールのRide。
    理由は3本(=3L)で1漱石と安価だったから。
    でも缶記載を見る限りではFC規格のようです。(まだ2本が未開封・死蔵品のまま。)

    カストロールは数年前に缶のパッケージデザイン(単なる図柄だけでしょうが)を変更しておりますので、その切り替えタイミングでかなり廉売されましたが、今でも時折安価に出回ることがあるようです。Rideで400円前後、Activeで600円強だったような。

    色合い的には紫色の処が可能性が高く、赤い処は低いかと。私が入手したのは千葉市が本社のホームセンタでした(約3年前)

    「い」さんが廉く入手できたら、次にテストしてみません?>Ride
    Posted by さんどろ at 2007年12月28日 00:47
  2. そうですなぁ.しかし,ウチは古くて燃焼の粗い Vespa ですから,さぞ排気も汚く環境負荷も大きからん.ということでこれからは潤滑性より清浄性重視の FD 規格品を使っていきたいと思うのでありますよ.それでなくともデポジットが溜り易い性格のエンヂンですし.

    FD 規格そのものは策定されて未だ日が浅いということもあり,製品の数は少ないのですが,それでも YAMAHA などは普及品のオートルーブ・スーパーを逸早く FD に切り替えておりますし,上記のメカドックのような安物も出て来ておりますしね.今後はやはり順次入れ替わっていくのが時の趨勢かと.

    ま,もひとつは,ワタシは Castrol が嫌いであるという理由もございます w
    今は知りませぬが,過去に他車で Castrol を使った経験に照らせば,デポジットの蓄積量は少ないのですが,差詰め灰分が多いと見えて質が固い.よって取り除くのが面倒臭く,かつ油質も上等とは思えなんだのですな.
    Posted by 「い」 at 2007年12月28日 13:23
  3. 初めまして。
    SUMIXの評判を調べていて、このサイトに辿り着きました。
    よろしくお願いいたします。

    分離給油にSUMIXやCastrolなど粘度の低いオイルを入れると、巷で言われるように確かに消費量が増えますが、オイルポンプは容積型のはずで、どうして粘度で吐出量が変わってしまうのか悩んでおります。

    ひょっとしたらアクセル全閉もしくはそれに近いところでは、吸入負圧によってオイルが吸い出されているのでは?と疑っております。もちろん粘度は低いほうがこの負圧の影響を受けやすいと思われます。

    アクセル開度が大きなところでは負圧は減少しますから、結果としてオイル粘度は低いほうがアクセル開度による供給量への影響が小さくなり、個人的にはポンプの調整がし易くなる方向です。

    ノーマル状態では、どうしても中開度以上でオイルが過剰になります。かといってオイルポンプを絞ると、低開度高回転域で不足気味になる、ここで低粘度オイルを使うとちょうど良い塩梅になるような感じです。

    TZRでいろいろ試されたようですので、よろしければそのあたり教えていただけないでしょうか。何とぞお願いいたします。
    Posted by Rotarycoupe at 2014年12月13日 20:53
  4. コメントありがとうございます.
    さて,お尋ねの,オイルの動粘度と流量の関係ですが,主にこれは配管抵抗が関わって来るかと考えとりますね.

    参考: http://www.mohno-pump.co.jp/learning/manabiya/c2c.html

    いっぽう,負圧によるオイルの吸出し効果ですが,オイル経路には,キャブ側にしろポンプ側にしろ,スプリング+ボールによるチェックバルブがある筈で,この作動に影響を与えるほどには吸出し力は強くないように私は思いますが,如何でしょうか.
    Posted by 「い」 at 2014年12月14日 18:52
  5. 早速のご返事、恐れ入ります。

    チェックバルブを押し開けるにはある程度の油圧が必要で、粘度が小さくなればオイルポンプのピストン側面からの漏れ量も多くなり、逆に消費量は減るのでは?と疑問に思ったのが吸い出し力に着目したきっかけでした。いっぽうでポンプ手前の配管を外してタンクから自由落下でオイルを抜こうとしてもなかなか落ちてきませんから、「い」さまの言われるように配管抵抗は相当大きいと思われます。参考となるリンクのご提供、ありがとうございました。
    Posted by Rotarycoupe at 2014年12月14日 22:39
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