2008年02月22日

かもすぞー

夢を見ました.
どんな夢かと申しますと,ドブロクを密造する夢であります.

これ,そんな目で見るでない.確かにワタシは目下極貧で酒代が無く,生来の酒好きにも関わらず絶酒を余儀なくされておる折柄,禁断症状から遂に狂夢を見たか哀れな奴め.と思われても仕方ございませぬが.

だが聞かれよ諸君,先の元旦には酒など幾本もあったのだ貰い物だが.まぁそれも2日には綺麗サッパリ呑んでしまい,再び絶酒状態に戻って一ヶ月以上が経過したわけですが,ワタシはお酒があればあったで幾らでも呑んでしまうが断酒が続いても平気な体質なのは既に実証済である.つまり,この夢を見た原因は断じて禁断症状などではない.

# 正月に呑んでしまったお酒の話題も面白いので,後に御報告致しますがそれは一先ず措いて.

実は,目下の拙宅は貧乏人の分際でコメ余りなのであります.何故かと申しますに,昨秋,家人の実家が沢山の新米を送って来てくれたのですが,生憎ワタシは弱い米糠アレルギー持ちですので,捗々しく消費出来ぬまま折角の新米が空しく古びつつある.これは物凄くモッタイナイ.御百姓さんにも天皇陛下にも顔向けが出来ぬ.何とか有効利用出来ないか.
……とまぁそういう強迫観念が無意識下に鬱積しておったと思われたい.そこで……

ワタシの与り知らぬ脳の奥所は,余っておるコメを酒に醸そうと思い付いたのでありましょう.何となればアラ不思議,ワタシャ酒なら幾ら呑んでも米糠アレルギーは出ねぇと来らぁ.コイツァ何とも豪毅だね.

日本酒一升の醸造に要するコメの量がどのくらいか存じませぬが,仮に質量比1/3と置けば,ワタシが白米相当量600gを食えば,必ずや何かしらの症状が出る筈である.が,実に御都合主義な事に,酒だと一升呑んでも何ともない.これは多分,酒造前にコメを入念に精白するからでしょうし,また,発酵過程で麹菌中のプロテアーゼがコメに含まれるアレルゲン物質 -何らかの蛋白質- を分解,乃至は変性し,発症の閾値以下に抑え込んでしまうからではあるまいか.

このような仮説に基づき,折よく余っておるコメで自家醸造の酒を醸し自ら呑み,以て仮説を確かめようというジェンナーにも比すべき身体を張った論理実証の思念が浮上したと思われます.
したが日本酒の醸造は相応の専門技術や設備を要する.そこで次善の方法として家庭でも安易に造れるドブロク.という着想に至ったのでしょうが,皆様も知っての通りコレは酒類の密造にあたり紛れもなく犯罪であるから勿論実行能わざる.その抑圧がワタシをして斯様な夢を見さしめたと思わる.イヤハヤ全く無意識とは怖いものでありますね.覚醒時のワタシなら到底こんな投機的な事は思い付かぬ.

してこのドブロク,具体的にはどのように造るかと申しますと,「ドブロク 作り方」などでぐぐって見れば仕方はワンサと出て参りますので途中省略.まぁ夢ですから途中が飛ぶのはよくある事.それにしても粒麹ごときが312円もするとは知らなんだ.かなり財布に痛いのぅ.まぁ成功すれば次からは酒母を使い回せるわけだが……とブツブツ言いながらドブロクを仕込んだわけでございます.夢で.

ところで,市販されておる公認ドブロクを呑んだことのある方なら御存知でしょうが,あのお酒は「ド ブ ロ ク」などというドメスティックで如何わしげな名前の響きとは裏腹に,自然な微炭酸の清涼感があって,中々に爽快な味のお酒でありますね.冷やして呑むとコレがますますドライになって大変結構である.そして口当りが良いのでつい呑み過ぎて腰が抜け,翌朝には炭酸起因の頭痛に悩まされる……と言われますが少なくともワタシは大丈夫.
ワタシは微炭酸系のお酒というのは種類を問わず可成り好きな方でして,例えば伊エミリア・ロマーニァのランブルスコなぞを大いに好む.特に中辛口が宜しい.もちろん赤であります.

ここでワタシが「ランブルスコが好き」などと申しますと,昔からのワイン通の方の中には「あぁ,あの安物甘口のモドキワインね.アンタ,舌がどうかしてるんじゃないの?」と顰蹙される方は今も少なからず居られましょう.がしかし,お言葉ながらそれは些か時代遅れの通念と申し上げておきたい.また,あまり事情に詳しくない方は「赤の微炭酸スパークリングワイン?それってどこのメーカーが出したキワモノ?」とも思われるかもしれぬ,しかしそれも間違い.これは古来から当地にある伝統酒でございます.

然るになぜ本邦ではそのような不当に貶めた通念が流布されておるかと云うに,かつてランブルスコと言えば,アメ公の女子供あたりがパンチなど造る時のベース酒と申しますか,総じて下等なものばかりしか輸入されておらなかったという現実がございました.

一方彼の地では,確かに値は安酒の部類と雖も,評価は確固たるものであると聞き及びます.実は15年ほど前にも,幾つかの酒屋と談判に及びまして,何とか上物の部類のランブルスコを輸入出来ぬか調べさせたのですが,当時の状況では極めて煩瑣かつ法外な値段を余儀なくされました.だが今は違う.安値な割に良いものが手軽に呑めるようになってございます.

【例えばこんな奴.メディチのレッジァーノD.O.C.】

味からすると,値段が不自然なくらい安い.当地の書肆に “Gambero Rosso” というのがございますが,ワタシは知らなんだが,近年はこの本で高評価を受けたり,オスカーも取ったりしておるようです.従前のイタリアの田舎の安地酒から,オシャレで安くて呑み易い新顔ワインへの一躍出世というわけで,以前からの贔屓としては誠に喜ばしい,なにやら不遇の友人がスポットライトを浴びて世に出たような気ぞ致しますな.

言うまでもないことですが,ランブルスコの至妙な炭酸のシュワシュワ感というのは,発酵過程で酵母が生み出すもので,基本原理はドブロクと変わるところがございませぬ.しかし方やランブルスコは大いなる出世を果し,方やドブロクは犯罪の匂いのする密造酒の暗いイメージにて,似たもの同士の両者なれども運命の対照的な事よ.

てな案配で益体もない雑談をしておるうちに日々は夢のように過ぎ, …夢ですから当り前ですが… 醸し上りましてございます.

【写真はイメージです.コレはあくまでも唯の水ですぞ.
 ちなみに浮いておるのはオレンジの皮】
ドブロクの水

……と,ドブロクを呑んだつもりになって水を呑んでみたわけですが,唯の水とは云え美味いものはウマイのである.季節柄,低温でジックリ醸す結果になったからか,非常に濃厚でアルコール分も明らかに高く,日本酒より相当に濃ぅございまして大変結構.幸いにして今のところ全くアレルギー症状も出ぬ.材料はみな自分が吟味,と言っても余り物ばかりですが,原料の質も量も既知であるから安心この上ない.イヤハヤ,これが現実であったらどんなに良いことでありましょう.

してここで思い付いたには,例年,家人の実家からは特産のリンゴを大量に送って呉れ居ります.これがまたナニブンにも大量ゆえ,いつも食い終えぬうちに古くなってスカスカにしてしまうのが常ですが,リンゴの主成分は澱粉と糖質でありますれば,ミキサーで擂ったリンゴに酵母を利かせ,醗酵させて澱引すれば,ドブロクならぬアップルシードル -これまたワタシの大好物- を造れるのではなかろうか.いや待てよ,田舎から送って来ると云えば大量の馬鈴薯もそうだ.これも澱粉であるから糖化すれば薯のドブロクが造れる筈である.チトこれも順次試してみるかのぅ夢で.

おっと,正月に呑んでしまった面白いお酒の話を書き漏らしましたな.水の酔いが頭に回ったか.では,それは次回に.

posted by 「い」 at 14:32 | Comment(6) | TrackBack(0) | 呑み喰い
[この記事へのコメント]
  1. 「い」さんのいはマック「イ」ーンのい。(笑)

    >田舎から送って来ると云えば大量の馬鈴薯も

    ジャガイモ密造酒と云えばアノ映画。
    主人公はバイクの扱いも達者でゴザイマシタので、ソコも「い」さんにカブります。

    >日本酒一升の醸造に要するコメの量がどのくらいか〜

    精米歩合であれば、所謂純米酒で7割、大吟醸でも5割は残りますが・・・
    なんて思いながらサラってみたら、こんなの見つけてしまいました。

    http://www.tamanohikari.co.jp/sakekind.html

    俵ひとつで60キロといったところですから、大吟醸でも米2キロあれば1本イケますね。
    フツーにやれば600グラムでコト足りそうな勘定デス。

    私は良酒を求めて旧・ますだやへ赴くとします。
    ★もっとも最近『人間フォアグラ』状態なので控えざるをえないのですが・・・(苦笑)>Sake

    Posted by さんどろ at 2008年02月22日 20:13
  2. > フツーにやれば600グラムでコト足りそうな勘定

    約500g の白米で1.5L のドブロクが造れますので,おおよそ普通純米酒と同じ程度の質量比ということになりますな.

    さても「大脱走」で McQueen が密造しておった馬鈴薯の酒ですが,これがどのようなモノであるか,ワタシは今ひとつハッキリと覚えておりませぬ.確かに彼等の故郷の英国には,馬鈴薯を原料としたアイリッシュ・ウヰスキーが存在しますが,あれは蒸留酒であるから,収容所で蒸溜なんて目立つことが出来たとは思えぬ.

    朧気な記憶を辿るに,見た目はドブロクに近いものだったような気がするので,やはり醸造酒なのでしょうのぅ.あのような条件下で造るとすると,まず馬鈴薯の澱粉質を糖化せねばならぬ.これは多分麦粒に水を掛けて置いておき,麦芽酵素を抽出すれば良からん.次いで糖化した澱粉をアルコール発酵させるイースト菌が必要である.これはやはりパンを焼く厨房からパクって来たか,パンの白いところを水に浸して得たものであろう.

    このように考えると,再現出来なくもなさそうでありますね.やりかたをいっぺん覚えておくと,将来逮捕拘禁された時にも酒が飲めて便利かも知れませぬ.
    Posted by 「い」 at 2008年02月23日 17:33
  3. 私の記憶も朧げですので、確信は持てないのですが・・・

    アノ映画、確か収容所の中で蒸留してたような気がイタします。
    何かドタバタやっていたような。

    ナイショで森までの穴を掘っちゃうヒトたちなので(実際には少々足りなかったワケですが)、施設内の蒸留が出来たとしても不思議ないかも、と思わせるものが在りました。

    >将来逮捕拘禁された時〜

    ユメで脱税(というか、酒税納付不履行ってカンジですが)しても投獄されるコトは無いと思いますが・・・されてしまった場合には面会を装って菌類の差し入れにまいりましょう。

    万一、一緒に投獄されたりしたら、何の役にも立たないでしょう・・・。
    ココは運び屋に徹するのが賢明というもので。>さんどろ





    Posted by さんどろ at 2008年02月24日 01:39
  4. > 収容所の中で蒸留してたような気が

    やや,そうですか.白く見えたのは泡か,それともある種のアイリッシュ・ウヰスキーのように白濁しておったのか,それとも単なる思い違いか.

    改めて考えてみますに,彼の地には麹という素晴しいものがございませぬから,醸造工程だけでは然程アルコール度の高い酒は造れぬ,故に蒸溜が必須.ていうことはありそうですな.
    何でも日本酒原酒の20%超のアルコール度というのは,世界の醸造酒の中でもトップなのだそうですし,ドブロクでもゆっくり何段かに分けて仕込めば17%ぐらいは難しくないとも言われるようで,

    まぁ,それには麹が必須にて,ワタシがメデタク塀の中に入った折には,ダイフクか何かの中に麹を忍ばせて差し入れて頂きたいと思うものであります.
    尤も,ワタシを引っ括ろうと思ったら,夢で造ったドブロクなどという曖昧な罪状に問わずとも,軽く叩けば遥かにキナ臭いホコリが幾らでも出て来そうな気はそぞろ致しますが.
    Posted by 「い」 at 2008年02月25日 00:02
  5. 夢でどぶろくを造るのはともかく、現実にある大量のコメはどうするんでしょうか? キノコが生えるのも虫が湧くのも嫌ですよねぇ。
    コメからジュースが作れれば、何の問題もないんだけどなぁ。
    Posted by T2 at 2008年02月26日 22:58
  6. それは心配無用.何となれば,コメが一旦麹発酵することでワタシにとって無害化出来ることが実証されれば,全くの遵法で甘酒だろうが粕汁だろうが自由自在に造れるからであります.喩えれば牛乳で腹を壊す人もチーズやヨーグルトでは大丈夫なのと同様.つまり,

    > コメからジュースが作れれば、何の問題もないんだけどなぁ

    この言葉通りのことが実現出来るわけでありますな.特に甘酒は,以前のトピック「夏の甘酒」http://www.easyurl.jp/78mで触れたように,漉して冷やせば,来る夏にも絶好の飲物でありますれば,いくらコメがあっても困りませぬぞ.
    Posted by 「い」 at 2008年02月27日 00:15
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