2008年05月31日

明日の若葉

去年も書きましたが,再びアシタバの旨い季節がやってまいりました.

いや山菜はアシタバに限った事ではない.ましてアシタバは厳冬期以外は何時でも採れるのですが,最近はワラビやゼンマイ,ツクシやタラの芽などの人気種は競争率が高ぅございまして,芽吹き具合を見ぃ見ぃ摘む頃合を計っておると,ふと油断しておるうちに根こそぎゴッソリ取られてしまいおる.
結果的に今年はあまり採る能わず,春先に僅かに採って水煮にしておいたワラビなぞを今もチビチビと食い延ばしておるという,相当にシミッタレた状態になっておるわけですが,その点アシタバは当地にては格落ちの雑草扱い,さらに繁殖力旺盛,加えて新来の住民には馴染みが薄いと見え,採るに苦労がございませぬ.

さよう新来の住民.
ここ伊豆の辺境も,昨今の……何と言ったかな,そう「団塊世代の大量離職」から,えーと「充実のカントリー・セカンドライフ」とやらを受けて人口密度が上がりつつあるようでございます.【注】 どうやらダンカイの人々とは,高度成長を全速力で駆け抜けて来た慣性がついておる上に,未だ老衰の翳りどころか精気横溢,山菜採りでも60年安保粉砕デモの如き怒濤の気合で臨むと見える.方や当方は「シラケ世代の覇気の無い若者」の成れの果てゆえ,到底その気魄に於いて及ぶところではな〜いもんね〜.と当時風の語尾で書いてみたり.

【注】総務省統計局 平成10/15年 住宅・土地統計調査
2003年の日本全国の別荘の戸数:257200戸
1998年の戸数219800戸に比べ35400戸増加.うち静岡県の別荘戸数,直近5年間で約1万件増加して03年に長野県を追い抜き首位……すなわち直近5年の日本に建った別荘の実に28%が静岡県である.


そういうわけで伊豆に転居をお考えの諸兄,競争はかなり熾烈でございますぞ.持ち前の気合を振り絞り,伊豆での家探しには腹を据えて掛って頂きたいわけだ,が.

ときに「シラケ世代」と申しますと1970年代当時,非常に虚無的な歌詞の歌が多く流行ったもので,ワタシは洋楽好きであったのであまり熱心に聞いた方ではござらぬが,とりわけ中でも東西横綱と言えば多分,吉田 拓郎と井上 陽水でありましたでしょう.その一方の雄,陽水の曲に「人生が二度あれば」というのがございます.これは歌詞を御覧になってお判りの通り,人生に酬われる事の少なかりき晩年の両親を歌った歌ですが,何気に最近聞き返してみて驚いた.どう驚いたかと謂えば,この曲で歌われる老残の両親は「今年で父65歳と母64歳」つまり歌の中ではまだ64歳と63歳なのでございます.オイオイこりゃワタシにとっても然程遠い未来じゃねぇぜ.

この一事を持ってしても,日本人の平均寿命がいかに飛躍的に延びたか察せられましょう.70年代と云えば僅か30年前,その頃には,堂々65歳を老残と表現して誰も不審には思わなかったのですなぁ.当時の65歳って今100歳弱だから事によるとまだ生きとらんか.それどころか歌った陽水自身が1948年生との事ですので,あと僅か5年で65歳である.

まぁ人間の寿命などは無限に伸びるものでもなし,まして将来は高齢者福祉も増々お上の手が回りかねるは必定なれば,ワタシが老いぼれる頃には再び早死傾向に転じるのではなかろうか.
それはそれで大変に結構.ワタシのようなシラケ老人が徒に長生きしても後世代に迷惑なだけでありますれば「いつまでもお元気で」などというオタメゴカシにイイ気になったりなどせず,スポーツとか禁煙断酒運動とかフードヘルスなぞに踊らされる事も無く,かと申して徒に不健康を衒う事もなく,以てさほど遠からぬ日に訪れるであろう,ごく有り触れた死を歓迎出来るように今から心積り致しましょう.

# そこで図らずも思うのは先に95歳で物故したワタシの祖母の事で,彼女は死の数ヶ月前まで頭脳明晰,長き準備期間を掛けて自分で自分の葬儀のあらゆるダンドリをしておったらしいのですが,最期に至って一気にボケまして,どこにその指示書があるのか不分明,縫っておいた筈の自分の経帷子も遺言も債券も所在不明となり,営々と準備して来た事が何の意味もなかったというお笑いの一幕がございました.いやはや何事も,その場になってみぬとワカランって事ぁあるものですなぁ.ワタシとて今際の際になれば,どのような未練がましい事を言い出すか判ったものではないわ.

ともあれ,アシタバの如きは,葉が出たらドンドン採って行かねば,ただ薹が立って固く背ばかり高くなり,毛虫ぐらいしか食わぬ葉を幾ら茂らせた末に倒れ枯れ腐れても腐葉土にさえ栄養が無く,森の為にはならぬ.
我が来し方を振り返るに,ワタシなんぞは典型的なアシタバ人生でありまして,現時点でもじゅうぶん食えないオヤジに成り下がっておりますでな.

ただ,芽ワラビを根こそぎ持って行くような事だけは勘弁して頂きたいものでありますね.ここ伊豆は医療全般が手薄なことでは定評があるのですが,とりわけ産科医は殆どなく,ワタシの住む貧民団地にも愛すべきガキ共の可憐なるクソ喧しい声も間遠となり,母校の小学校の教室の2/3は使われておらぬ.
福祉予算も無限に非ずんば,老人に使う分が増えれば子供に回す分が手薄になるは是非も無い.
しかし,まだ産まれぬ我らが少国民たちよ,諸君への少しばかりの慰めに,前世代が伸ばした平均寿命,ワタシ一人分でも気の赴くままに生きた挙句に縮まってくれれば,微力ながらも帳尻合わせに益さん.

アシタバのパスタ

…てなわけで,今日はアシタバの若葉と細チリメンジャコのパスタ.どちらも季節物の素材なれば,大変に美味しく頂きました.初物は寿命が延びると申しますれば大変結構々々.

……はて,言う事にチト矛盾があるような.

【関連エントリ】
目に青葉
posted by 「い」 at 19:52 | Comment(1) | TrackBack(0) | 閑話随筆
[この記事へのコメント]
  1. アシタバ、美味いですね。
    夏は嫌いですが、暖かく、また暑くなると葉っぱの類はぐんと美味くなります。
    Posted by inagaki at 2008年06月01日 21:53
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